サンズアンプと向き合った思い出話。

少し前から、正確には真夜中のレコーディングの少し前辺りから音作りを一から見直している。
こうわざわざ書くとなるとおおごとのように思えるかもしれないけれど音作りについてはまだ模索中で、実はここ一年くらい前にも音作りの発想から考え直したりしていた。

以前はグングン前に出てくる音が好みでそれこそ『ハイミッドとトレブル命!ローは必要最低限アタックについてくるだけ!』みたいなオラオラした音作りをしていたのだけど、鈴木実貴子ズで定期的に演奏をするようになってからというもの、その音がライブの現場でどうも色々と邪魔をしているんじゃないかと思える瞬間が結構あった。
具体的にはピックアップで拾われてライン出力されているアコースティックギターの音と思いっきり被ったり、ふとした時のアタックがボーカルの音域に突っ込んでいったり。
なのでその時その時で調整出来るようにわざわざ高域を削るようなイコライザーを足元に置いたりしていたのだけど、実は自分の好みのアタックというのはトレブルやハイミッドで作られるものではないのではないか、と思ってからそれなりに試行錯誤して、今は『ガンッと鳴るアタックとそれを包む低域』という気持ちで音作りをしている。トレブルよりもハイミッドが大切であり、サンズアンプ version 2.0のミドルのシフトスイッチは1000Hzから500Hzへと変わった。
音作りをする上でそもそも最初の入口になるのは機材でも指でもなく、発想だと思う。

そこからさらに最近意識していたのはもっと『信号としてわかりやすいもの』を送る事で、それまでガンガンに上げていたサンズアンプのドライブコントロールをグッと下げる事にした。きっかけはインターネットを徘徊していた時に「サンズアンプのレベルコントロールはインプットレベルのコントロールである云々」という記事を読んだ事で「へえ、そうなの」くらいに思っていたのだけどファズを踏んだ時の音量のガツッと上がる感がもっと欲しかった僕はこのインプットレベルという言葉に当然引っ掛かったのであった。
じゃあ、サンズアンプのレベルってある程度上げておいた方が良いんじゃないの?と思ったわけである。

で、レベルを上げたりドライブを下げたりしているうちに丁度良いバランス感みたいなものを見つけて、じゃあトレブルコントロールやプレゼンスはここまで上げなくていいですね、みたいな話になってきて、要するに今更ながらにまともにサンズアンプのツマミに向き合ったという次第。
思考停止的に「このツマミはここ、これはここ」と決めてアンプのツマミで微調整するのではなく、ちゃんと一から信号を整える事に向き合って、出来るだけ遠回りせずに音を作るように心掛けている。
結果、手元のニュアンスは出しやすくなったし各エフェクターの特色もなんだか前よりちょっと出てきたような感覚もある。
サンズアンプ以前のレベルコントロールも考え直し、コンプレッサーでブースト気味だった信号はユニティゲインになるよう調整、意味のない信号に対するゲインの増幅がないように心掛けた。

実際、この状態で何度か演奏をしたのだけどラインの段階でちゃんと好みの音が作っているので、ステージ上で鳴っている各楽器の音が飽和しないようにアンプからあまりガンガン出せない時もPAさんの「じゃあ外音出しますね」の段階でラインの音が足された段階で丁度欲しいアタック感が浮き出てきたり、結果的にメインスピーカーからのベースの音は良い具合になっている事が多い。
ダイレクトボックスによってラインシグナルが確保してあればある程度は安心みたいな心持ちになれたのは一つのストレスから解放されたと言えるだろう。
勿論好みのアンプヘッドから出力される音は会場の規模によってはフロアにダイレクトに響くだろうし何よりそれを背中から受けて弾く上で演奏に関わる気持ち良さの部分で大きな影響はあるものの、ある程度環境に左右されずに演奏に臨める余裕が生まれたのは良い事だと言えるだろう。

つくづく思うのはサンズアンプの懐の深さである。サンズアンプのツマミの変遷はそのまま自分の音作りの嗜好の変化と成長の記録である、といったら仰々しいだろうか。
でも正直それくらいの気持ちだったりする。じゃなきゃこんな日記も書かないだろうしね。

2020_09_27_001
2020年、舟橋のサンズアンプの各ツマミの印象
レベル:12時くらいは出しておこうよ。
ブレンド:14時くらいが気持ち良い。
トレブル:12時以上出す必要ある?
プレゼンス:アタック感が出るくらい微調整(基本12時より少し右)。
ドライブ:最低9時。そこから気持ち良い感じなるまで少しずつ上げる。
ミドル:15時。シフトスイッチは500Hzね。
ベース:14時。シフトスイッチはその時その時で。
低域は確保して、アタック感とドライブ感を微調整。アンプヘッドで環境の違いによるイメージとの誤差を埋めていく感覚。

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