妻と念書を書いて契約を交わし、その上でファズを購入してからもうすぐ契約満了の半年が経とうとしているが(とは言ってもあと1ヶ月程あるのだが)、その間全く完全に契約を履行しているかと言われると恥ずかしながら、そうではない。
契約開始から3ヶ月が経過しようかという2023年1月上旬、「買い始めだから」「要らないゲームソフトを下取りに出してそれを足しにして買うから」と言いつつ歪みペダルを買ってしまったのだった。これは例外的に妻から出された恩赦のようなものであるのだが、契約不履行には違いがなかった。
念書を書いた割に、ではそれが反故にされてしまった場合はどうなるのかを全く検討していなかったのは、これは契約が不履行になるとは想像もしなかったからである。
念書には効果がないわけではなかった、いや、確かに効果があった。「念書を書いたから」物欲を意識する事さえなかったし、楽器屋に行く事も極端に減った。それでも新年明けた浮かれ気分には敵わなかったし、さらに嗚呼、これから書こうとしているのは実は、更なる罪の告白なのである。
2月に入りたての頃である。
1月は仕事もうまく立ち行った。毎日一喜一憂しながら、それでも楽しんで仕事をしているとはいえ、やはり一生懸命務めるなら一喜したい。
1月は営業の成果が出、一喜ならぬ二喜、三喜とする事が出来て僕は大層上機嫌なのであった。まだまだ寒い時分であったが毎日ホクホクとしていたものである。
その上機嫌が油断の原因であった。久しぶりに個人売買フリーマーケットサイトを見たところ、かねてから気になっていたパワーサプライが大変手頃な価格で出品されている。
「機材は見つけたその日が一番安い価格である」がモットーであるし、何よりこれより値段が崩れる事はないように思われた。妻に興奮しながらスクリーンショットを送りつけると『買っちゃえ』と返信が。妻も今回の獲物が如何に買い得か理解しているのであった。
2日程悩み、値段交渉の結果、当初の価格より更に手頃な価格で手に入れる事が出来た。
Ex-pro PS-2 パワーサプライである。
ペダルボードを組むようになり、その当初からこれまた手頃な価格で手に入れたパワーサプライをずっと使っていたのだけれども、当初は出力の口数くらいしか気にしていなかった僕がそのうち、供給電力や各出力の電圧、ノイズ等々、パワーサプライに大して気になるポイントが幾つか出てきた。
今時のインターネットは便利だが不便だ。楽器や機材のレビュー等、データの列挙以外は主観の集まりでしかない。
ある人が「ノイズが格段に減りました。流石、フルアイソレート」と書けば別の人が「本当にフルアイソレートなのでしょうか?ノイズの観点から疑問です」と書いたりする。他にも色々気にするべき点はあれども、きっとこれはパワーサプライという沼にもう少し浸かった人達が語り合う領域なのだろうなという事もしばしば。けれども今現在使っているパワーサプライでは何となく不満点の方が多い気がする。というか、買い替えが遠くない未来に迫っているのを感じる。
というタイミングで気になっていた本機(手頃な価格)に出会ってしまった。
恥も外聞もなく言い切ってしまうが「中尾憲太郎氏が愛用しているのだから間違いないだろう」くらいの感覚で買った。あと電圧表示が格好良かったのもポイント。
つまりまあ、中尾憲太郎氏のコスプレアイテムですよね、と揶揄されれば返す言葉もないのである。
届いた当日に早速ペダルボードに組み込んだところ、成程、出力ジャックの配置も適度にゴツい筐体も、ボードに組み込んだ際に有益なようによく検討されている事が実感出来た。このコンパクトかつ、コンパクト過ぎない筐体に出力ジャックをあれだけ沢山並べるのには斜めに連ねて配置する形式は理にかなっているように思えるし、実際ケーブルをそこから取り回した際に「あ、使いやすいじゃん」と思った。見た目も綺麗だし。
で、プリアンプ後のEQを18V駆動させているので出力電圧を数字で視認しながら可変出来るのは大変有難い。
あとやはり見た目が格好良い。べらぼうに格好良い。
出音は換装前後で厳密にチェックしたわけではないけれど、なんだか元気になってハッキリクッキリした印象。
一緒に演奏するメンバーからも「音の解像度が上がった気がする」とコメント。
この辺はプラシーボ効果もあるかもしれないけれども、プラシーボ効果を疑いながら音を出した上で変わったと感じたのでそれくらいには変化が体感出来てしまった。
沼が音を立てて口を開きかけた感覚もあったのでこれについてはしばらくは熟考しない方が良さそうだ。
ペダルボードの裏側に隠していたパワーサプライ、表側に出す余裕なんぞあるものかと思っていたけれど、その気になればどうにかなるものである。