ノムラエクスプロージョン

人生で一番長い約2ヶ月が、終わった。

エレクトリック・ベースギターを初めて手にした高校3年生の頃からもっとも長く楽器に触る機会を失い、ライブハウスに出演するようになった20歳の頃からもっとも長くライブで演奏しなかった。数多の感情、数多の無念、数多の不甲斐無さを身に染み込ませ、本日、ようやくライブに復帰出来た。

数多くの人に心配をかけてきた。身近な人、家族、友人達、そして勿論各バンドメンバー。そして僕の代理で演奏してくれた5人のベーシスト達。彼らがいるから僕の各所属バンドは3バンドとも公演に只の一つも穴を開けずにここまでこれたし、僕は治療に専念出来た。

左肘の骨を骨折するというのは長期的な問題、そして近い将来に問題を抱える事になる。恐らくこれからずっと一生涯、季節の変わり目や気圧が変化する度に僕の左肘は過去に一度折れた事を痛みを伴った主張をするだろうし、見た目も決して美しくはない傷跡が僕が過去に左腕にメスを入れた事を思い出させてくれるだろう。

しかしそれより何よりも近い将来に控えた各公演、それらに対する問題の方が大事であった。

神田佑介そして美鈴さんの結婚パーティー、そして誘って頂いた素敵なイベント、メンバーで相談して決めた遠征、ブッキングのライブ。それらのどれ一つとして僕はこの2ヶ月間、全曲演奏しきった事はなかったのだ。

元はといえば自らの行為が招いた骨折、不慮の事故ともいえない失態である。だがそうであるが故に痛切に後悔した。しばらくはそんな日々が続いたのだけども、バンドと距離を空けないため、そして今回の休止期間をばねにするため、全てのスタジオ、全てのライブ、全ての遠征に参加して各バンドの現在進行形を目に焼き付ける必要があった。結果的に外からバンドを観る事で得るものは大きかったように思う。

左肘に入れた針金(ベース弦、と称してしまおう)を摘出するまでまだまだ間があるけれども、痛くないポイントを見つけて右手を使って飛び出してきた針金、左肘の肉を内側から刺激する針金を押し込む事で痛みを消す事に成功、本日JONNYのライブにて演奏活動に再開出来た。

久しぶりのステージは興奮と達成感に満ちたものになり(他のメンバーからは心配と気遣いを感じた。感謝)、同時にスタミナの減少に気付かされた。しかし、まあ兎も角、僕はライブが出来る。それだけで今は十分だ。

復帰第一弾が、JONNYのサポートベース(つまり僕だ)のサポートを担当してくださった3人のうちの一人、野村さんによるノムラセントラルステーション企画だったのは幸運だった。感謝の念を演奏で返すという、バンドマン冥利に尽きるまたとない機会だった。

いやしかし全バンド良かった。テレポテは実に巧妙に構築されたポップさを打ち出してしかしそれだけに止まらず、WEENIE RADIO SHOP(ギターヴォーカルのしょうじさんはネット対戦出来る戦争ゲームで闘ってきたものの、直接会話するのは初めてで念願が叶った。オフラインでも実に素敵で心優しいロックスターである)は人柄から滲み出る風格、そして音楽を鳴らしながらエンターテインするというまさしくロックスター然としたライブを展開、DOIMOIはもう本当にヘヴィでタイトで、そしてメロディが良い素晴らしい楽曲で中毒者が多いというのも大いに納得。トリのノムラセントラルステーションは最前列で観るとドラムしか聴こえないくらいの音圧の中(だってドラム5台だぜ。ボアダムス以外で他にいるかいこんなバンド)漢達、そして石井姐さんの気合炸裂。もう演奏が始まるだけで客席のテンションがトップギアに入るライブを展開していた。全出演バンドがそれぞれの方法で華を見せ、実に充実した企画だったなあと思う。しかし野村先生は名古屋を代表するエンターティナーだ。

僕がライブハウスに出演するようになった頃から既に第一線で活躍されてきた方であり、そして今なおその規模が拡大しているというその姿勢、かくありたいと痛感する。面白い事、もっと面白い事という求心力に演奏技術、そして誰からも愛される人柄があるとああいう形に結実するのだろうと思う。通常ならば演奏する曲の基盤となるリズムを打ち出すドラム、それが5台も並んでいるが故に演奏の中心、全てのまとめ役とならねばならぬ重責、そしてそれをしながらベースも弾いて歌ってMCもしてと大活躍だ。

野村先生の真価が発揮される瞬間だと思う。そしてノムラセントラルステーションを観た事がない方、機会があったら是非一度観て頂きたい。音楽の好みの差異とかそれ以前に、ドラムセットが5台ステージに組んであってギターアンプが2台あって、そしてベースアンプがあって、それらが一斉に鳴らされるのって無条件で興奮するよ。それだけでもうエンターテインメントだよ。そして曲が良いからそれってば本当に最高だよ。

実に素敵なイベントで復帰戦第一弾を挙行出来て、幸せでした。

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