ライジングサンは中止になったものの、最高の経験をした話。

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8月15日、台風10号がいよいよ接近しようかという頃合、僕はもう気が気でなかった。
翌朝7時45分、中部国際空港発の飛行機で北海道へ飛ぶ予定である。人生初の北海道での演奏、しかも夏フェスへの出演が目前で飛行機が飛ぶかどうかの瀬戸際であった。

目出度くもオーディションの結果、鈴木実貴子ズはRISING SUN ROCK FESTIVAL2019に出演する事となった。凄いな、夏フェス出演!!
知らせを聞いたのは7月の初旬頃だっただろうか、仕事を終え高橋君から連絡を貰い、妻に相談し職場の上司に相談をし慌てて妻と娘と3人分の航空券を予約したのだった。お盆シーズンという事もあって航空券は割高である。LCC、格安航空券でも3万近くした。だが背に腹は変えられない。「夏フェスに行く時は出演者として演奏しに行く時だ」と口にしてはいたが果たして本当に自分が夏フェスに出る事になろうとは思っていたか定かではないが、人の手伝いとはいえ巡ってきた絶好の機会、折角だから楽しみ切りたい。
幸い職場のボスは大変理解がある方で「そんな機会ないだろうから行ってきなさい」と快く有給申請を通して下さった。
今回のRISING SUN、話題になるのは再結成したNUMBER GIRLの出演である。まさかのナンバーガールとのある意味対バン、これは凄い事になったぞと心踊ったものの、その日が近付くにつれ、娘を連れて夜の9時過ぎに北海道っていうのは負担が大き過ぎる、というか現実的ではないなという思いが強くなった。家族に預ける、という選択肢も浮かんだがそれも実現出来そうもなかったので、結局ナンバーガールのライブを観る事は諦める事にした。
高橋君から「いいんですか本当に!」と尋ねられたがしょうがあるまい、家族を伴ってのバンド活動にはある種の線引きが必要だと思っていてる。けじめといってもいいかもしれない。僕の場合はそれは「演奏行動以外には自分の欲を通さない事」だ。30分のライブで演奏する為にはそれ以外の時間は可能な限り家族に配慮する。30分を演奏に集中する為には必要な事である。ナンバーガールはまた観る機会もあろう。
腹は括った。

さて、あとは飛行機が飛ぶだけだ、というタイミングであれは15日の20時頃だっただろうか。
SNSのタイムラインが怪しく騒ぎ始めたが遂にオフィシャルな告知がされてしまった。
「RISING SUN ROCK FESTIVAL2019、初日16日は開催中止」
台風10号がこのままだと直撃するのだ、運営サイドのこの決断は正しい。史上初の中止の決断は苦渋の思いだっただろう。
唖然としながら飛行機の欠航で動けなくなるリスクを避ける為に予定より早く北海道入りしていた高橋君に連絡を取る。
リアクションは早かった。既に現地入りしていた鈴木さん、高橋君、各務君の3人はこのままでは終われないだろうなと思っていたが、やはりこのまま落胆して終わる人ではなかった。
翌日、昼にワンマン、夜にツーマンが決まったのである。なんて迅速、そしてフレキシブル、そしてドラマチックなのか。
ライジングサンはなくなった、だが飛行機よ、飛べ。そこに演奏の場があるのであれば俺もそこにいなければならない。

翌朝、早起きして空模様を見ると風が強いし雨も降っている。どうかな、と思ったが同じ便で北海道に向かう友人が空港に既に到着しており、どうやら問題なく飛行機が飛ぶようだと教えてくれた。慌てて荷物を持って3人で空港へ向かう。金山駅まで実家の両親が送ってくれた。お土産に札幌ラーメンを約束した。
飛行機は、飛んだ。定刻通り、予定通りに飛んだ。娘は飛行機の中でも落ち着いていた。隣の席の外国人の乗客とコミュニケーションをとっていた。初の国際交流だ。
着陸の際に気流の関係か揺れて、胃袋がひっくり返りそうになった、が無事に到着。レンタカーで札幌へ。

30~50人しか入らない会場に100人近くの人が詰めかけたり、酸素が薄くなって体調を悪くする人が出てしまうくらい人が入ったり、兎に角鈴木実貴子ズの2人の情熱に応えるように北海道、そしてそこに集まった人達は熱かった。僕も胸が熱くなって実力以上の演奏が出来たと思う。

カメラマンのアヅマさんが一日密着して撮影、編集した動画がアップロードされている。僕もチラホラ映っている。

二度のライブを終え、皆と別れて家族と予約していたホテルに到着した頃にはクタクタになっていた。
だがこんなに充実した疲れもそうそうなかったと思う。
全てが奇跡のような一日であった。

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