僕だって真面目に考えたりはする。

冷静に考えれば、先日の演奏を終えてから約2ヶ月ライブの予定が、ない。
これは大変珍しい事でともすればこの10年間、有難い事に一ヶ月に一度は人前での演奏の機会を得てきたし多い時はもっと人前で演奏してきた。僕のようなスタンス(つまり自己研鑽のための演奏活動を主とし、平日は仕事で収入を得、平日夜或いは週末の演奏でそれを成し遂げるというスタンスである)で演奏活動を継続する人間としてはこれは結構珍しいのではないか。月に一度の演奏が、ではなくそれを10年の間絶える事無く継続する事が出来た事が、である。もしかしてもしかすると、これは音楽を生業に、音楽で生計を立てようとしている人間でさえこの期間人前で演奏をし続ける事というのは難しい事なんじゃないかとさえ思う。
これはひとえに僕が節操がなかったからで、内容も選ばずに必要とお声がかかれば『まずは』やってみるスタンス(これでしっぺ返しを食らう事も僅かではあったけれども、あったものよ)で、あとは同時に幾つもそういうお声がけを抱えたり有難い事に気に入って頂いて継続的に演奏に参加したりその結果加入したり、そういうのがあったからである。この10年間、本当に多くの人と演奏したと思う。
ただ勿論続けている事が自慢になるわけではない。素晴らしい演奏家だけれども今は人前で演奏する機会がほぼほぼない同業者を僕は知っている。その人の演奏だったら僕は優先事項の上記ベスト3に入れるレベルで観に行きたいと思う。そう思える演奏家が今は人前で演奏していないのだから続ける事は僕の演奏技術の向上に繋がりこそすれ、イコール演奏家としての僕の価値とはならないのがはなはだ残念ではある。
変な物言いになるけれどもさ、一緒に演奏する人間や演奏する内容を選ばなければ、そりゃあ絶える事無くバンド活動を続ける事は出来るよ。そうしない人達が圧倒的に多いという、ただそれだけだ。
僕は有難い事に都度都度一緒にやってみたいと思う演奏や挑戦してみたい音楽がそこに存在したのである。
では何故その10年間を経た上で11月まで演奏の予定がないのか。これはひとえに心境の変化である。
これは、これだけはと半ば意地になって続けてきた時期もあった演奏活動を一旦差し置いて、向き合いたいと思う『予定』が差し迫っている。

妻の出産である。

出産というのは一大事だ、特に妻にとっては本当に一大事だ。僕なんかでは想像もつかないような大事を彼女は抱えている。
大前提として、妻は僕の演奏活動に関して大変寛容だ。週末の時間の使い方はそのまま家族としての時間の使い方に関係してくるのでライブのオファーを所属バンドが貰ったり僕個人宛にオファーを頂くとまず僕は妻に相談する。
「ライブのお誘いが入ったのだけれども」「ああ、やってきたら?」
即答である。彼女は内容や時期ではなくその日その時に家族としての予定の有無で検討している。その結果過去のオファーでは8割、いや9割方「やってきたら?」と肯定的な回答であった。
ではこの時期ライブの予定がないのは彼女の、妻の要望によってなのか?答えは否である。
彼女は家族である僕も驚いたのだが9月上旬、つまり臨月のオファーも「やってきたら?」と答えた。予定日近くのオファーに関しては「その日別に予定は空いてるけど、生まれちゃうかもしれないよ」と答えた事もあったな、確か。ストロング過ぎる。
こういう人と家族というコミュニティを形成するとなると、やはり背筋が伸びる。こういう人間に負担をかけてはいけないな、と思う。

あと妻のお腹が大きくなるにつれ、どうやら自然と心境の変化が僕に訪れたようである。
演奏が何よりの楽しみであったし人とのコミュニケーションであったけれども、僕は妻のお腹の中にいる自分の遺伝子を持つ他人の存在が興味深くてしょうがない。彼女に会えるのが待ち遠しくて仕方がないのだ。この分だと彼女が妻の胎内から出てきた後も相当興味を刺激されるに違いない。子どもという存在にちょっとじっくり取り組んでみたいという気持ちがある。
そういうわけで次の演奏が11月になった。しかもその演奏も自宅の近所、大変融通が効く、というかオファー元に融通を効かせて貰えそうだから妻への相談と熟考の末、引き受けた。これからはなかなか家を空けられぬ、というか空けたがらなくなるような気もする。育児は大変だろうけれども楽しかろう。妻も妻で表現する事に喜びを感じる人種なので妻の時間も尊重したい。
諸々関係して、その時期になった。長い人生だ、自分の興味の方向も様々な方向に向くだろうし、自分の一日24時間の使い方も色々な状況で変化するのが当然である。僕は欲張りだからその時その時で全てのバランスが『良い具合』であるように望む。
家族も仕事も、そして音楽も楽しくやりたい。何かを我慢する、のではなく向き合い方、取り組み方を変える事によってそれを成し遂げようと思っている。

真面目な話はこれでおしまい。
この三連休は家でゆったり過ごしたり今池祭に遊びに行ったりした。妻の体調が安定せずではあったのだけれども、様子を見ながら妻も一緒に出掛けた。

2018_09_16_001
犬栓耳畜生のまりいちゃんと出会ったので妻と。
まりいちゃんも妻と子の事を慮ってくれていて嗚呼、優しい娘さんだなあと思った。

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