僕ったら写真の一枚も撮っておけば良いのにね

恐らくはG-FIGHTERでの演奏以来の藤ヶ丘MUSIC FARM、JONNYで出演してきた。

久しぶりのMUSIC FARMはとてもやりやすかった。住谷君がPAをやっておられて時間の流れを痛感。彼とも久し振りだ。以前出演した際って、まだ確か「最近音響に就いたんですよー」とか言ってなかったっけ。何にしてもとても快適な状況での演奏。あれでひどい演奏してたらもう完全に自分達の責任。

で、幕が開いて驚いたのは物凄い人数のお客さんの顔、顔、顔。物凄いとは言ってもスタッフさん曰く7,80人ではあったのだが、それでもMUSIC FARMでその人数ってのはもうパンパン。比較的我々が外様気味な出演陣ではあれども、お客さんも楽しんで下さったようで嬉しかった。

そうそう、これから書く事っていうのは冷静な今、振り返って書くにはあんまりにもあんまりな話かもしれないし、

バンドマンとお客さんというそれぞれのアイデンティティを崩壊させかねない話ではあるけれども、書いてしまう。結局全てはエンターテインメントだと思うし、真実は現場にあったからだ。だから、これだけは忘れずに書いておきたい。僕と、一人のお客様についての話だ。

演奏の最後、僕は興に乗るとフロアに特攻をしかける。更に悪戯心が湧くと人にベースを渡してしまう。相手は共演者だったりその日の主催者だったりする事が多いのだけれども、時折制服姿の女の子やスーツ姿の方にもベースを渡し、その方がフィードバックと狂騒の中どんな演奏をされるか愉しむようにしている。

そんな僕の被害者様方だが、まず戸惑ってベースを肩から提げたまま固まってしまう方が半数。僕は申し訳ないな、と思いながらもその「休符」を愉しむ。

残りの半数はそれぞれの演奏を披露して下さる方々だ。ステージに乱入してベースの弦を引きちぎるのは、レッサーホース 野村先生。ex.JONNYのロビン君はガシャーンと鳴らして格好良かったし、Discaphoricsのチカラさんはベースを叩き折るジェスチャーをして僕を驚かせてくれた(ニヤリって笑った瞬間、滅茶苦茶格好良かった)。他にも印象深い演奏をされた方々は大勢いらっしゃるけれども、昨日の眼鏡をかけた青年氏、彼の演奏は一生涯忘れられないものになるだろう。

ライブ終盤、猛り狂ってフロアに乱入し、ベースを人に託そうと辺りを見回した瞬間、眼鏡の青年がとても「良い」笑顔で拳を振り上げているのが見え、僕は反射的にその青年氏にベースを渡したのだった。

「ガツーン!とやって下さい」とベースを示しながらジェスチャーで訴える。「貴方の演奏で、貴方の衝動で、貴方の爆発力を皆に見せつけて下さい」。

青年氏はそのジェスチャーを見るや、吠えながらベースを掻き鳴らし高々とベースを掲げた。ああ、彼もそして僕とても、とてもではないが「そんなタイプ」には見えやしないだろう。しかしライブハウスというあの場、あの空気で目の前の青年氏が見せて下さった演奏。その瞬間の僕っていうのは何かとても得難いものを目の当たりにしたような、とてもとても純度の高いものを観たような、そんな気になった。頭に血が昇り、多幸感に支配される。爆発。

「ロックンロォオオオオオオオオオオオオル!!!!!!」

今まで幾度となくライブハウスで口にされてきた言葉、我々バンドマンからすれば根本的かつ抽象的故、説明が実に難しい概念。それはロックンロール。

似合わないって事くらいわかっている。しかしあの青年氏の演奏から僕が受けた衝撃は、まさにロックンロール。

気がつけば青年氏の拳を高々と掲げ、実に曖昧でまさか自分の中から出てくるとは思わなかったその言葉を連呼していた。

ライブハウスって面白いねえ。こちとらお客様にお金を頂戴して、一生懸命演奏するわけですよ。

でも30分程の持ち時間の最後の最後で、お客様に物凄い衝撃を与えられたりもする。

多分、昨日のあの瞬間の衝撃っていうのは忘れ難い。

演奏終了後に抱擁を交わした青年氏、彼がこのブログを見るかどうかだなんてわからないし、多分読まないと思う。けれども僕は貴方の演奏に心動かされました。

もし貴方が少しでもエレクトリック・ベースギターを掻き鳴らした事に快感を感じたのでしたら、いつかあの日の感覚を思い出してエレクトリック・ベースギターを掻き鳴らしてみて下さい。

僕程度の演奏なら、そう時間がかからないうちに追い越せてしまうはずです。

ちょっと書いておくつもりが、こんなに長くなってしまった。つまりそれだけガツン!とやられたって事である。

大入り満員のMUSIC FARM、全バンド人と人の隙間からチラリチラリと観る事しか出来なかった(バンドによってはそれさえも適わなかったが)けれども、十二分に楽しんだ。諸先輩の演奏、そしてバイタリティに刺激を受けて良い感じに。名残惜しいけれどもその活力そのままに「さあ帰宅して溜まっていた作業を」と思っていたのだが、まさかの佐藤さんの車が動かない。ハザードを点けっぱなしにしていたようでバッテリーがあがってしまったのだった…。

色々あったけど、楽しい一日だった。毎日こんな感じだと良い。

コメント

  1. より:

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    前回、ベースを預かり、昨日少し話した者です。演奏は回を重ねるごとに楽しく、音がわかるようです。で、任されると、まず、驚き戸惑い、頭真っ白。そこからの行動は普段思いもしない本心が出ます。それこそが、あれなのです。考える余裕がなく。演者と客。近くて果てしなく遠く。一気に縮まる時、なにかが起きます。ありがとう、そして、これからも。

  2. 舟橋孝裕 より:

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    >幸さん
    大丸のお話をさせて頂いた方ですね!声をかけて下さって有難うございます。とても嬉しかったです。

    幸さんのコメントを拝見して思ったのは、あの行為というのはどちらがどちらに近づくというものでもなく、同じ線上に立つという行為なのだな、と。ライブハウスというシチュエーションに何を期待してお互い赴くかによってあの行為は誤解を招きかねませんが(故にナマモノ的な行為であります)、少なくとも幸さんにはご理解頂いているという事が非常に嬉しく思います。

    大丸も是非行ってみて下さい。私共大丸を愛するバンドマンの一部でもご理解頂けると思いますし、願わくば是非楽しんで下さい!笑