東野圭吾『ガリレオの苦悩』

続・我が逃走

東野圭吾『ガリレオの苦悩』の感想を書いてみる。
(本作と同時刊行された『聖女の救済』の感想はこちら 、話題作『容疑者Xの献身』の感想はこちらこちら から)

いよいよもってしてハマッてしまった『ガリレオ』シリーズ。
長編は好んで読んでいたものの、短編はなぁと以前の印象を払拭できないまま本書を手に取った。淡白過ぎる文章で書かれる短編に味気なさを感じるんじゃあないか、等と危惧していたものの、どうしてどうして。
これが一晩で読了してしまう程、実に面白かったのである。

本書は『落下る』『操縦る』『密室る』『指標す』『攪乱す』の5篇の短編から成るわけなのだが、一番印象深いのが第二章の『操縦る』である。湯川の大学時代の恩師が登場する本作は『容疑者Xの献身』を踏まえた上で読むと尚更に味わい深い。
「人の心も科学です。とてつもなく奥深い」
ネタバレは避けるが、この発言が湯川の口から出るそのシーンは本書に収められた5篇の短編の特性を端的に示しているのではないだろうか。

『容疑者Xの献身』で人の心の奥深さに触れた湯川先生、どうやら随分とスタンスが変わったご様子。
その辺りが楽しめるだけでも、もう立派にキャラクターとして愛されるようになった『ガリレオ先生』愛好家としては必読である。

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