東野圭吾『聖女の救済』

続・我が逃走

読了してから結構時間が経ってしまったけれど、記憶が風化しないうちに感想を。
東野圭吾『聖女の救済』。

男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。湯川が推理した真相は…虚数解。
「おそらく君たちは負ける。 僕も勝てないだろう。 これは完全犯罪だ」
ガリレオシリーズの新作長編

というわけで『容疑者Xの献身』で感銘を受けた「ガリレオ」シリーズ新作。同時刊行された『ガリレオの苦悩』は未読。『探偵ガリレオ』を読んだ時の印象からか、どうもこのシリーズの短編集には未だに抵抗がある。
それはともかく、本書なのだが。
面白い。面白いのだが、やはり『容疑者Xの献身』には個人的には、届かず。そもそも比較を前提とした書評というのはどうなんだという気もするのだけれど、やはりシリーズものとなると作中人物や前作への思い入れというものは断ち切れず、特に僕の場合『容疑者Xの献身』に感じ入ってしまっただけあって、そういった意味ではハードルを高めに設定していたかもしれない。
トリックも「なるほど」と唸らざるを得ないし、それがタイトルに繋がっていく、文章によって繋げられていく様はやはり美しいのだけど、感情移入がどうにもできない一作だった。
その辺りは読み手が男性なのか、女性なのかで随分と違った感想が出てきそうではある。

あと個人的に例の「福山雅治~」というくだりの読者サービスは別にいらなかった気が。ニヤリとはすれども何だか一瞬現実に引き戻されてしまった。

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