「5月21日、空けて貰う事出来ますか?eastern youthとクアトロでツーマンです」と高橋君(鈴木実貴子ズ)から聞かされたのは練習へ向かう途中の車の中だったと思う。あ、いや練習終わりの帰りの車中だったかな。
とりあえず僕はハンドルを握りながら「嘘っ!?うおおおおおおおお!!!」と叫んだ。これは確かだ。
吉野さんのソロ outside yoshinoと鈴木実貴子ズ、ツーマンしたのは知っていたのだが、eastern youthとバンド編成でツーマンする事になろうとは(高橋君が「やりたいなあ」って言ってたわそういえば)思いもしなかった。
eastern youth、大学時代に所属していたサークルで先輩とコピーした。
ギターが上手い先輩から、その先輩の代の卒業記念ライブで演奏するために誘ってもらって参加したのだが、いざ楽器を抱えてコピーしようとするとこれが相当に苦労した。聴いた段階で気がつかないのがおかしいのだが、ベースが相当ウネっており「ルート弾きでガンガン!」が信条でそればかりやってきた僕は演奏するのにかなり手こずった。
加えて、音源のベースも絶妙な塩梅で、ギターを前に出しつつも雰囲気を彩ったり楽曲にうねりを加えるようなそういう音作りだもんだから耳コピにも滅茶苦茶苦労した。
結果的に「こんな感じだろう」というフレーズでしかコピー出来なかったし、本番はピック弾きでベース本体のトーンを絞り目にして温かい音を心掛けて演奏する事で先輩には許して頂いた。いや完コピっていうのは相当難易度高いバンドだよ、eastern youth。
で、eastern youthっていったら僕個人としてもそうだし皆の憧れのバンドである。もうこれは無邪気に憧れのバンドとのツーマンを楽しみにしてしまう僕がいた。
鈴木実貴子ズでは何度目だろうか(この日とかこの日がそうですね)、CLUB QUATTROでの演奏も幾分か慣れた。
普段やっている場所とはサイズ感やら音の飛び方やらが違うけれども、違和感もまごつく感じも最初の頃と比べて随分と減った。
先攻はまさかのeastern youth。
リハの一発目から感動したんだけど吉野さんのギターの音ってもう明確に「eastern youthの音」なんだよね。
物凄く格好良い音。自分がエレキギターを弾いてたらあんな音出したいと切に思うであろう音だ。
この日は「ツーマンなので恥じない演奏を」とか「同じステージに立つ者として食ってかかるような気概を持って」とか思っていたんだけどなんのその、いざ演奏が始まればもう僕はただの興奮したファンでしたよ。
『踵鳴る』とか『夏の日の午後』とか握り拳を振りかざして興奮してしまったし、いつぶりだろう、ライブハウスで歓声を上げるのは。実に興奮した。
不思議なもので、いざ自分達の出番前になると気持ちも落ち着き、では如何に今日、刻み込むような演奏をするかに自然と気持ちが向いていくものだからバンド活動は面白い。
こうなるとツーマン相手が誰であろうと関係はないのである。過去最高を如何に出すか、自分の中のものをそのまま出すにはその最適解は、その最短距離は、如何にそこを突き抜けるのか。考えてもしょうがないので考えずに自然体でステージに上がる、が最近の試行錯誤の結果の一つであるのだけれども、これさえも正解かはわからない。
転換中、僕のベースアンプに異変が。
リハーサルの時は正常に動作していたのだけれども、どうも音が大きくなったり小さくなったりする。モニターPAさんに確認して頂くとライン信号は異常なし、けれどもキャビに立ててあるマイクの音もミックスしているので安定して動作するヘッドに換えた方が良いのでは、という事でQUATTRO常設のアンプヘッドに繋ぎ変えた。
eastern youth 村岡さんは常設のアンプを使われていたようで(ギグバック一つでやって来られたという事で、いやあ格好良いよなあそういうスタンス!!)、アンプのツマミもそのままになっている。
試しにそのまま音を出してみると、いやこれが良い音だったので本番もそのままやってしまった。
先程「相手が誰であろうが」とか書いたけれどもやはりeastern youthを見て、貫く格好良さに感化されていたのだろう、演奏中に構えてしまった。作為がそこにあった。
作為が生まれ、それを自覚すると途端に僕の演奏は冷静になる。それが良いとか悪いとか、なんならきっとその日その場所によって違うのだろうけれどこの日、したかった演奏、するべき演奏はそれではなかったなあと思っている。
まだまだまだまだ未熟者ですよ。
どれだけ削ぎ落としていけば「そのまま」を出せるようになるのか。重ねていくしかないのかねえ。
終演後に楽屋にて。
30分程度だったけれど乾杯からの楽しい時間を過ごした。
こういう時に口下手な僕は皆が話しているのを黙ってみているだけだったけど(笑)。