PEDALmeetingにお手伝いで参加。

僕はエフェクターが好きだ。

ただただ好きなだけで、特別に見識があるとかそういうのでは全く、ない。
けれどベースギターに繋いで「こんな音出るの!?」とか「あ、この音格好良い」とかそういう感動が原点にあって、今もその未知の興奮に出会う喜びを感じているからこそエフェクターを買い続けている。
大学2年生の頃、所属していた音楽サークルのライブで先輩がワウペダルを踏みデジタルディレイをかけながら物凄いギターソロを弾いていて(しかもNIRVANAのコピーバンドで、だ。思うに先輩はコピーをしようだなんて気は微塵もなかったな違いない)、その宇宙感に衝撃を受けた。その時から明確に「これは面白いものだ」と買い漁ってきたエフェクターだけれども、未だに飽きる気配がない。最初にエフェクターに興奮してからもうすぐ20年が経とうとしている。その間にどれだけのエフェクターを試したかは定かではないが、それなりの数のエフェクターを経験したにも関わらず好奇心を刺激されるのは僕が試す台数以上に新しいものが世に出てきているからである。
それだけ多くの人がまた、新しい音を求めているからであろう。

さて、エフェクターが好きな割に僕が手を出さなかったのがエフェクターの『自作』である。
自作エフェクターはあまり興味が湧かなかった。僕は何ならエフェクターに工業製品としての完成度の高さやデザインの素晴らしさを求めているので、その全てが満たされない自作エフェクターは興味の範疇外となっていたのであった。
エフェクターを作るという行為が楽しいだろうな、と思わなかったわけではない。というかむしろ絶対楽しいでしょそれ、と思っていた。時折エフェクターの自作キットを販売しているwebサイトを見ては妻に「これ買って作ってみようかな」と相談していたものの、結局は作ったそのキットを自分が愛着を持って使っているイメージがどうしても湧かず「使わないものを作ってもなあ」と購入ボタンを押すには至らなかった。

そんな僕が、エフェクターの自作ワークショップのお手伝いをするのだから世の中わからないものである。
全てはこの日にstiffslack新川さんに「舟橋君、半田ごてとか使う?」と声をかけて頂いた事に端を発する。
リハーサル後、表で立ち話をしているところにフラリと「これからコンビニ行くんだよね」的な雰囲気を醸し出しながら現れた新川さんが近付いてきておもむろに上記の質問をしてこられたのだ、正直面食らった。

「えっ」
「エフェクター好きだよね」
「好きです」
「実はさ」

と教えて貰ったのがこの日開催されたPEDALmeeting。
講師のお手伝いが何人か必要で「舟橋君、エフェクター好きだからそういうの出来そうだと思って」との事だった。内容を聞いた瞬間絶対やりたいと思ったが、ただ一つ問題が。エフェクターの自作に於いて僕は完全に素人である。前職の頃、楽器の修理に於いて半田ごてを握った経験はあるもののそれも随分と前の事であるし、抵抗やら何やら、全くちんぷんかんぷんである。
「きっと大丈夫、また連絡するね」と新川さんの言葉にドキドキして、大丈夫なのかどうなのか心配ではあったがそれでも楽しみの方が大きかった。

勿論、事前に講習はあった。
本番を迎えるこの日より数週間前、一度運営側のメンバーでstiffslackに集まり実際に当日作るペダルを練習がてら作ってみようという会があった。20時に到着して、作業について教えて頂きながらどうにか音が出るように仕上げたのが25時頃であった。「凄い!初めてなのにこれは凄いよ」とPEDALmeetingの講師を務める小池さん(ELECTROGRAVE)は褒めて下さったけれども、明らかにどうにか仕上げたという感じであった。この苦労を事前に知っておいて良かった。

当日は小池さんによる講義(今回制作したペダル=トランスペアレントなオーバードライブ、について。メーカーで設計もされていた小池さんの話は会場の様子を見たり事前準備をしながらになったけれども、拝聴していて面白かった。熱心な方は物凄い勢いでメモを取られていた。気持ち、わかります)を経て、いざ製作へ。
この日の参加者は20数名、どうやら経験者の方も数名いらしたようだけれどもほとんどがエフェクター自作は初体験。それでも最終的にはほぼ全員が音が出ていたし、中にはカスタムに挑戦する猛者もいていやはや、やっぱり情熱があれば成果は出るのだと再認識した。

当日はなんだかんだ12時間以上stiffslackにいて、しかもその間割と頭をずっと使っていたから疲労感を感じないわけではなかったけれども、それ以上に達成感と満足感を感じた一日であった。
エフェクターの自作、面白い。

回路を研究して自分でデザインして、だなんてこれから死ぬ程努力しないと出来ないだろうからその時間は楽器の練習と研究に充てるとしても、たまに半田ごてを握って手を動かすのは楽しいかもしれないと思った。一番大きく認識が変わったのは、それまでは何の感慨もなく眺めるだけだった基盤がいざ自分が作ったものだと「可愛いなぁ」と愛着を感じたという事。不思議な感覚だったけれども、自分が一つ一つ半田付けした部品の集合体って妙に愛おしくなるのだ。
小池さんがこの日のために特別に設計した基盤を用いて、音が出るまで協力までして頂けるこの豪華企画。好評だったようなので新川さんも二回目を考えていらっしゃるとか。
その折は是非また、参加したい。
せめてそれまでには自分の半田ごて買って、何かキットでも買って作ってみようかな。

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写真はこの日の様子。参加者の皆様の顔はプライバシーがあるので塗り潰してあります。

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