リバーブ、というか「空間を感じる/感じさせるエフェクト」に興味と関心は以前からあったものの、一際それらに注力するようになったのは数年前の四国旅行の際に偶然訪れた銭湯でブライアン・イーノとロバート・フリップの共作に、それと知らずに空間と音楽の調和、そしてそれらの相乗効果に感銘を受けてからなのである。
その時以来、自分がサウナや浴室で感じる多幸感(浴室だから空間系、という至極シンプルな発想も含めての話である)を音楽や音で表現するのであれば、これらのエフェクト類は切り離す事が出来ないと考え、サウナをテーマにしたソロ名義の作品や即興演奏の際にはそれらを積極的に用いてきた。
また、リバーブを買い求める際はそういった頭の中で鳴っている音にどれだけ近付くか、どれだけ刺激的な音がするのかを判断基準として選定を行なってきた。この酷く曖昧模糊とした、ともすれば日によって感じ方も変わる「自分自身の感受性」という指標を以てペダル蒐集を行うと手持ちのペダルは増加の一途を辿る。そして所謂バンド・アンサンブルの中では使うシチュエーションが「とてもとても限定的な」リバーブペダル等が機材棚に集まってくるようになってくる。
シチュエーションによってそれらを使い分けて演奏に臨むわけなのだが、僕が最近多く演奏の機会を得る鈴木実貴子ズのバンド編成に於いて使用するリバーブペダルについては常に試行錯誤してきた。
極論、そこ(鈴木実貴子ズの音楽)にそれ(ベースパートに於ける空間系エフェクト)はなくても構わない。
だが僕が鈴木実貴子ズの演奏をする上で、エレクトリック・ベースギターであの音楽に参加する際の持ち場の中のその余白、そこにある余地に於いて僕は空間系ペダルを踏むという選択を好む。特にリバーブやディレイは「広さ」や「繰り返し」を直接的に表現するばかりか、我郷愁や儚さ、そういった美しい感情に訴えるものがある。時間を超える作用、空間を超える作用、そして直接的な極めて物理的な領域でのバンド・アンサンブルに於ける作用、それらを求めて僕はリバーブやモジュレーション・ディレイを持ち込んできた。
BOSS RV-6は大変優秀なリバーブ・ペダルで、主にライブでリバーブ・ペダルを用いる時はこれを使ってきた。モジュレーション・リバーブモードが色気があって、それでいて品があって美しい。
その他のモードにしてもその美しさ、立体感は秀逸である。
だけれども、同時に今の自分のしたい表現委はより似つかわしいものがあるはずだ、とも思ってきた。アンサンブルの中に於いてもう少しだけ「かかりましたよ」感が欲しい。
その欲求への回答が昨年末に見つかった。
それは、EarthQuakerDevices Ghost Echoであった。
もし貴方がこのブログの記事、或いは機材に関する僕の(思い出話と)備忘録に目を通した事があるのならば今脳裏をよぎった言葉は容易に想像が出来る。
「また、EQD(EarthQuakerDevicesの略称)なのか」であろう。
また、なのである。
というか正直に告白するとEQDのペダルは中古で、かつ手頃な価格で見つけるとすかさず購入している。今回も試奏さえせずに購入した。どうせ自分の楽器、自分のアンプ、自分のシステム以外で鳴らしても実際に使った際にどうであるかだなんてわかりゃしないのだ。それに僕はEQDなら信用出来る、と盲信している。だからこれからもEQDのペダルはガンガン増えるであろう。
ただ勿論そんなEQDのペダルの中でもリバーブペダルは探しているだけあって、Ghost Echoは気になっていた。
実際弾いてみるととても良いペダルだ、これは。
スプリング・リバーブなのだけどなんだろう、良い意味で雑味があるというかDwellコントロールを右に回していくにつれ持ち上がってくるリバーブ・エフェクトの厚みがバンド・アンサンブルの中でも良い具合に主張してくれる。
Attackコントロールは実音からリバーブ・シグナルが鳴るまでの時間を調節するコントロールなのだが僕の使い方だとピッキングとほぼ同時にリバーブがかかって欲しいので左に回しきり。
Depthはもうそのまま深さのコントロールなのだが、ついつい気持ち良くて深めにかけてしまいがちだけどそこはやり過ぎないように気をつけて調節するようにしている。
たった3つのコントロールなのに過不足がない、と感じさせるのはペダルのチューニングが絶妙だからだろう。どことなく不穏なリバーブ・サウンドなのでアンサンブルの中でもただ綺麗なだけじゃなくて微妙に不穏、というか癖を感じさせるような音作りが可能である。
しばらく、これを使っていこうと思う。
コメント