弦高パラノイア

最近は専らフランケン・ベース をスタジオに持っていく事が多い。

尤も半音下げで調整してあるが故にJONNYでしか使えないのだけれども、一時期はコロコロとそれこそ毎回のようにベースギターを換えていた事を考えれば今度という今度は、という気がしないでもない。まあ、今の気分に過ぎないのだろうけれど。

で、フランケン・ベースを先日練習の際に使ったのだけれども、どうにも違和感が。

4弦の音に締りがなく、アタックもない。音に違和感があるだけでなく、弾き心地も何か変だ。弦自体が右手のピッキングを受け切れていない感じ、といえば良いのだろうか、ピッキングに負けてしまっているのである。

乱暴に弾き過ぎ、というわけでもない。何だかどうにもへなちょこな、そんな音なのだ。サスティーンもなければ太さもない。ただでさえ長年の癖で高域のよりがちな僕の音が、その時に限ってはアタックばかりが目立つ。

アタックとそれについてくる低域感、それに慣れ親しんできたのにこれでは気持ちよく弾けないではないか。

一歩引いて冷静に眺めると、そりゃあそうなるわけだ、四弦がいつも通りにビビッている。生音でベースギターを鳴らした際に、僕のピッキングの仕方、そして入力で微塵もビビらないようにするには相当に弦高をあげなければならない。ピックアップで拾っていなければOKであると判断し、音に影響のない範囲では生音でもビビッているのに慣れてしまっていたので左手側のニュアンスに違和感をおぼえるのに時間がかかったのだろう。

フランケン・ベースのサドル高低ビスを回せるマイナス・ドライバーなんてものは生憎手元になかったので、そのまま練習を終えた。

帰宅すると同時に金属スケールをあてがってチェックする。

やっぱり、弦高が変わっている。

最近の記憶では、ベースの弦高調整をした際には一弦側が微妙に順反りしていた。ずっと弦を張らずに放っておいたのがいけなかったのだろう。しかしまあ、弦を張って使っていきながら様子を見よう、とロッドを少し締めてとりあえずネックはそのままに弦高を調整し直したのだった。これは楽器調整の方法論としては褒められたものではない。ネックが真っ直ぐの状態(世の中には若干の順反り、逆反りを好みそれらを基本的なネックの状態と捉える方もいらっしゃるので『平常時の状態』と表現した方が適切かもしれない)で弦高やオクターヴチューニングはするべきで、根本的にネックが反っている楽器で弦高を調節しても、それは根本的な解決にはならない。「見た目上の弦高」は変化しても(ネックが順反った事によって「見た目上の弦高」があがったように感じ、サドル側で弦高を下げたとしても)それは絶対的な弦高が変化したわけではなく、応急処置でさえない、と個人的には考えている。

では何故そのような状態で僕が弦高を調節したのかといえば、僕の中での「フェンダーのネック」へのある種の信仰とフランケン・ベースへのジャンクな愛情がそうさせたのだろう。フェンダーのネックにはとてつもなくどうしようもないものが存在しており、それらは調整してどうこうなるレベルではない反り方をしたりするし、大体からして色々なベースのパーツを寄せ集めて作ったフランケン・ベース、シビアな調節には耐えられないのではないか、と思ったのが僕に怠惰な「楽器調整」を行わせたのであろう。

しかし以前は、少なくとも弦が張られている間は矢のように真っ直ぐな状態を保っていた元ジャズベースのネック、弦を張られて楽器として扱われる事で本来の状態を取り戻したのだ。一弦が微妙に順反りしていた状態で弦高を調整していたばかりに、ネックが真っ直ぐになると同時に弦高も下がったのだ。

成程、シビアに見ていくと四弦だけではない。他の弦の弦高も微妙に変化している。最もわかりやすくネックの状態変化を表していたのが四弦だったというだけの話だった。

というわけで真っ直ぐになったネックにあわせて弦高を調節し直した。

右手のピッキングに違和感がない程度に音を出しながら調節していった結果、「四弦=2.0mm 三弦=2.0mm 二弦=1.5mm 一弦=1.5mm」という弦高になった。念のため改めてネックを見ると、よしよし今度はまっすぐじゃわい。これで気持ち良く演奏が出来るはずだ。

満足してベッドに潜り込んだ。

そして今日、たったさっきベースを握ってみると四弦に違和感が。念のため金属スケールをあてがってみると、四弦の弦高さが5mm下がっている。他の弦は変化がない事を考えると(一、二弦は兎も角としても、ネックの状態変化ならば三弦にも少なからず変化が生じるはずだが三弦は1mmとて変化していなかった)今度は弦振動でサドルの高さが変わったのだろうか。時折見かける状態ではあるし、自分の弾き方に起因する症状なのでまあ、楽器のせいには出来ない。やれやれ、手のかかるベースギターだと割り切るに落ち着いた。

これはしばらく金属スケールが手放せなさそうである。少し弾いただけではナンなので、演奏をある程度の時間、ある程度の環境で行って違和感がないようだったらネジの滑り止め(そういう便利な薬剤が世の中にあるのだ。ネジの溝をその薬剤である程度固定し、弦振動程度の負荷ではネジが動かないようになるのだ)をつけてそれなりに固定してしまうかもしれない。

まあ、何だね、(ほぼ)素人の楽器調整ながらも、自分の楽器には愛情を注いでいるというお話でした。

続・我が逃走
職場でもよく使う金属スケール。
自分の楽器の状態を数値化して記録しておく事は
自分の楽器の基本的なセットアップを知っておく上では有益な事だと考える。

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