『ミッシェル・ガン・エレファント THEE MOVIE-LAST HEAVEN 031011-』

続・我が逃走

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTは僕の青春の一時を彩ったバンドである。

09年にギターのアベフトシさんが亡くなった際はショックを受けたし、それと同時に「解散」の時に感じなかった喪失感を感じたのは確かだ。

この映画、解散ライブの映像を中心に(というか8割それである)据えて編集された映像作品なのだが、映像作品としての感想は「怠惰」であり「雑」なものである。だってそりゃそうだろう。ファンなら何度も見返したであろうTMGEの解散ライブ映像の合間合間に、インタビュー映像(NHK出演の際のものも含まれていたりする。新しく撮影したものでもなければ秘蔵映像でもないものだ、それは)を差し挟んで、それでモノローグを挿入したりしてそれらしく仕上げてある。

ピクシーズのツアードキュメンタリー程の『ドキュメント』を期待したわけでは勿論ないけれど、ただDVDを大きなスクリーンで鑑賞しているような気にさせられた。

途中ではたと気付く。

これは、映画ではなく「機会」なのだと。アベフトシ氏が逝ってしまって悲しみに暮れているTMGE愛好家達が一同に介して、大きな音で大きなスクリーンでTMGEの映像を視聴して、そして館内に充満したその「空気」に共感する。いわば同窓会だったり「偲ぶ会」のような、そんな機会を作り出すための『映画』だったのではないか。

現に僕、ノマれてたし。

涙腺は何度か開いたし、アベさんの「ありがとう」には物凄く寂しい気持ちになったし、ああTMGEって本当に格好良いバンドだったんだなあだなんて今更再確認したりもした。1998年のフジロック映像を見ると股間が縮み上がって血が猛るし(あの瞬間のTMGEは、同じバンドマンとして行き着きたい一つの極地だ)、スモーキン・ビリーにゲットアップ・ルーシー、そしてジェニーにドロップと高校~大学時代にイヤーホンから何度も流れ出したあの曲達を聴きながら当時を懐かしんだりもした。解散ライブで深く沈みこんだような静かな目でギターを坦々と弾くアベフトシ、クハラのドラムが入った瞬間に曲が加速する「あ、TMGEもそういうのあるんだ」という妙な親近感、『鬼』の右手、その凄まじくも美しいカッティング。チバユウスケのカリスマ性。ウエノコウジのドライブ感。

全てが色々な感情を伴って迫ってきたのである。

重ねて強調しておく。

「映像作品」としては残念極まりない。この映画TMGEというバンド、そしてアベフトシという男の「死」がなければここまで論評する事が出来たのかすら怪しい程『映画』然としていない。

もし貴方がTMGEの熱烈なファンで、そしてTMGEに「愛聴したバンド」以上の感情を抱いているとしたら、ひょっとするとこの『映画』は観ない方がいいのかもしれない。

思い出ばかりが先行するにわかファンな僕はこの『映画』で得るものがあったけれども、貴方はひょっとするとそれを何年も前に、とうの昔に、とっくに飲み下した可能性は否定しきれないのだから。

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