
月に1度のパイプカツトマミヰズ練習だった。
『月に1度』と書くとバンド練習の頻度としてはこれは多分結構低い方なんだろうなとは思うのだけれども、これがメンバーの大半がほとんど40歳前後、それぞれが職に就いており生活がある(いや誰しも生活はあるんだけど、家族だったり交際相手がいたり遠方に住んでいたりとか色々あるじゃあない)事を鑑みると定期的に対面で練習出来る事は構成員(ボランティアメンバー含)のポジティブな意思の結実した成果なのでは、と思う次第だ。
1ヶ月に1度の練習でもその間に新曲が作られて共有されていたり、又は前回の練習の録音を聴き返して復習していたり、或いは音作りに試行錯誤したりとそれぞれがこの集団に向き合う時間を「1ヶ月に1度」作るだけではなくしているのがありありとみてとれるので2026年今現在は手伝い=ボランティアで参加している元メンバーである僕としても大変に背筋が伸びる思いである。
このバンドを格好良いものにしたいという思いに演奏中(そして演奏中でない時間であっても)に全員が真摯に向き合う事こそがバンドという集合体をグッと突き動かす要因に必要不可欠なものなのだろうと改めて感じさせられる。
この日の練習も非常にポジティブ、人前で演奏する日がそう遠くないであろうパイプカツトマミヰズという集まりの実に健全な時間を過ごす事が出来たのであった。
『元メンバー』と書いたけれども、それについてこの日の練習後、練習スタジオのロビーで雑談している時に印象深い出来事があった。
「メンバーの仲が悪いバンド」みたいな話題になった時にふと「舟橋は色々なバンドをやっている/やってきたけれどもメンバーで仲が悪くなった事はないのか」という質問が投げかけられた。恐らく質問者は他意なく、会話の流れで僕に訊いただけであろうけれども、僕からすれば真っ先に思い浮かべた相手が至近距離の喫煙所で煙草を吸っていたので何だかドキッとしたのであった。
「あー、ありますよ」と応えるとそりゃあ訊かれるよね「誰ですか」。
「吉田君ですよ」
「何何?何の話?」
このタイミングで場に戻ってくるのが吉田君なんだよな。天才!
「いや、仲が悪かったバンドってないですか、という質問で。僕は吉田君ですよって答えたんだけど」
すかさず誤解や不安、不快な思いを与えないように僕は長年胸の奥にあった、いつかは話す事もあるのだろうか、いや話さずとも円滑に関係はいっているのだし殊更触れる事はないんじゃないのか、しかしながら罪悪感として確かにわだかまっている感情について吉田君に簡潔に、しかしながら直球かつ明確な意思表示をする事にした。
「バンドを辞める直前、僕達の間柄って実に険悪だったじゃんね。あれは僕が悪かったよごめんよ吉田君」
吉田君は正直な人間だ。正直、の部分を誠実と言い換える事が出来る性質の持ち主だ。
その瞬間に確かに一瞬、吉田君の目が揺れた(ように僕には感じられた)。
「いやーっ、あれは俺が病んでたから、あれは俺でしょ。申し訳なかったよ」
長年見ないふりをしていた感情、一緒に演奏をするようになってから何度もその話をするであろう機会はあったのにしなかった話はかくしてかくも簡単に(僕の中で)決着を迎えたのだった。
「辞めた理由は不仲ではない」と脱退した際の日記に書いたけれども、遠因としては吉田君との不仲はバンドに対するモチベーション低下の1つになっていたのかもしれないな、とは思う。しかしながらボランティアメンバーという形であれ、再びこのバンドで演奏するきっかけを作ってくれたのも吉田君なのだ。
新曲を作っていても「やっぱり天才なんだな」と他に類を見ないその才能に戦慄するばかりである。
報いよう。舟橋孝裕、42歳の決心。