友を訪ねて

実は去年の僕のワンマン 以降、山田君(不完全密室殺人)はそれまでも万全ではない精神状態をそれまで以上に悪くしていた。
独特な感性をライブ中に如何なく発散させる事でバンドの爆発力を体現していた山田君だけどその反動、日常の様々な負荷からかかるストレスっていうのはきっと僕達の想像もつかない程彼を苦しめていたんじゃないかと思う。事実、ライブ前に楽屋で相当ナーバスになりつつも本篇30分だけはそれまで通り、否、それまで以上にガツン!とやりきって演奏後はすぐに帰る。そんな時期もあった。
それでも実家の福井で親父さんが始めた蕎麦屋を手伝い、お店を盛り上げる事に情熱を傾けていたし事実ワンマンの頃には随分とストレスが軽減されたようにも思われた。
しかしそれ以降、ちょくちょく連絡は取り合っていたもののなかなか顔をあわせる機会もなく、そんな彼から「入院するかもしれない」と連絡があった時はやはり心配だった。
本人にも「入院したらもう出て来れないんじゃないか」という不安はあっただろう、それでも山田君は自分の精神のアップダウンからかかる負荷に耐えかねて入院する事を選んだ。名古屋にいた頃から通院していたものの、その頃とは比べ物にならない程彼が苦しんでいるのは電話越しでも、彼特有のユーモアを交えた口調でも十分に伝わってきたので必ずお見舞いに行く旨を約束し、そして山田君は入院した。

入院以降の山田君はメールや電話で連絡を取る限り快方に向かっているように思われたし、彼自身もそれと自覚する程に元気になっていた。医学的にどうなのかは僕にはわからないけれども、それでも山田君の元気な様を確認出来るのは僕自身嬉しかった。そろそろ、機は熟したのかもしれない。福井に彼を見舞う時がやって来た!
というわけで各務君、伊藤君と彼とバンドをやってきた人間達(神田君は家庭もあるし忙しいので、とりあえず見舞いに行く旨を伝えて任せて貰った)、当日に衝動的に同行する事を選んだ篠田君で福井県に山田君のお見舞いに行ってきた。以下、その記録。

山田君が病院側から貰った外出許可は9時~16時。当日が近づくにつれて山田君のテンションが上がっているのはわかったし、何より「それだけが楽しみだ」という友のため、我々早朝7時に名古屋を出発!
するはずだったのだがまさかのカーナビゲーションのドンギマッた案内(不完全密室殺人のツアーでも大活躍した各務君のご実家の車をお借りしたのだけど当時我々が搭載したカーナビゲーションシステムは古いものらしく、それから起因するものだと思われる)でなんと名古屋を1時間近くうろうろしており、東海北陸道に我々がのったのは8時過ぎ。
ちなみに全員、バンドに関係のない遠征は久しぶりだったらしく相当はしゃいでいた。

続・我が逃走

道中立ち寄った九頭竜湖にて記念撮影。物凄く景観が良く、旅の楽しさを噛み締める一同。
お気づきのように「お見舞い」というテーマではあれども完全にバカンス気分である。この頃山田君は「今か今か」と待ち構えつつも「お前ら何やってんのw」とtwitterにアップされたこの画像にツッコミを入れるくらいテンションが高かった。ってか山田君、この日の数日前に「当日のプランを考えた」と幾つか福井県での過ごし方について提案してくれたんだけどそれが尽く「福井を遊ぶ」みたいなプランで「ああこの人も遊び倒す気満々なんだな」と思った。
九頭竜の景観に興奮しながら福井入り。一同、山田君が入院している福井厚生病院を目指す。
ちなみに後程、山田君か最近九頭竜湖で女性の他殺体が発見されたと聞き少しだけ複雑な気持ちになった。

続・我が逃走

山田君が入院している福井厚生病院。建物の様子から察するに、増改築を繰り返してきたのではないかと推察する。詳しくはわからないけれど。とても綺麗で大きな病院だった。
ここの「ストレスケア科」に山田君は入院している。

続・我が逃走

そして、遂に再会!半年ぶりの山田君。この半年の間に体重は増え(一度は90kgまで太ったそうで、最近はダイエットしているそうで現在80kg。山田君は昔から体重の増減が激しいので今更驚かないけれど)、金髪になっていた。思った以上に元気そうで、相変わらずの山田節を早々に炸裂させる彼の様子に安心する一同。さあ山田君、娑婆で遊ぶぞ!

続・我が逃走
「俺、ウニ頼みます。Betしますか?」
「Bet」「Bet」「Bet」「Bet」「Bet」
「じゃあウニ6皿で」

「北陸の回転寿司は、格が違う」
かねてから山田君がそう主張していたので病院のすぐ近くの回転寿司屋へ。この日は平日なので何と全品一皿90円!では早速北陸の寿司の威力、見せて貰おうかというわけで一同食べ始める。
成程、確かに旨い!シャリは回転寿司っちゃ回転寿司なんだけど、ネタが違う。一段階レベル高い感じ。これが90円ならそりゃあ文句もないどころか大喜びで食べますよ。
福井名物を食い倒れるまで食べ尽くそう、という裏テーマ上、ここでそんなに食べるわけにもいかなかったのだけど気がつけば80皿分食べていた。篠田君はウニがトラウマになる程気に入ったみたいだし、口に入れた瞬間に溶ける炙りエンガワは僕も大いに舌鼓みを打った。伊藤君は大好きな穴子を一気に6皿食べてご満悦。各務君も天に召されそうな程満足気だったし山田君も楽しそう。福井珍道中、順調な滑り出し。

続いて、福井HARD OFF巡り。福井県まで行ってそれかよ、という声が聞こえてきそうだけれども、地方毎によって品揃えが全然違うリサイクルショップ巡りは機材好きにはたまらない天国なのである。
この近郊には2店舗HARD OFFはあるそうで、山田君の案内で早速向かう。

続・我が逃走

というわけでジャンクコーナーからROGERMAYERのファズを救出。電源部分が改造してあるだけでジャンク扱い。思いもしなかった良い買い物に僕、大興奮。一方篠田君は大量のCDを購入、山田君は前から欲しかったヱヴァンゲリヲンのグッズを買っていた。
もう一店舗あるそうなので、そっちも向かう。

続・我が逃走

ここにきて山田君の物欲が炸裂。
なんでも一部では評判のレアなキーボードと馬鹿デカいウーハーを購入。キーボードはオークションで見られる値段の5分の1の価格で購入出来、そのお洒落な外観と唯一無二の音色に一同「いいなぁ!」状態。しかしウーハー、何に使うんだろう…。
ちなみに各務君もYairiのアコースティックギターを購入。全員、楽しくなっちゃっていたんだろうね。
そして、山田君に内緒で進めていたドッキリのため、作戦行動開始。

伊藤「俺、駅フェチなのね。福井駅見たいなあ」
山田「福井駅は改築して綺麗になったばかりだからつまらないぜ」
舟橋「まあまあ、折角だから、ね!」

福井駅へ向かう。
実は山田君に内緒で福井駅で待ち合わせをしている人物がいた。
その人物とは…。

続・我が逃走

正義のヒーロー、大内ライダー(a.k.a.太平洋不知火楽団 大内貴博)福井に降り立つ!
山田君のお見舞いに行く旨を伝え、半ば冗談で誘った所参加の意向を表明してくれた大内ライダー。僕達が東京まで迎えに行ければ良かったのだけどもライダーの任務明けの時間と我々の移動時間を鑑みて、どうしたって無理な事が判明。これはライダー参戦は難しいか、と半ば諦めていたところ「現地集合で行く。14時に福井駅に着けるはず」とライダーから提案。凄いぜ、大内ライダー!
ちなみに大内ライダー、バイクではなく新幹線で福井入りしました。
このサプライズに山田君、「何かおかしいとは思ってたんだよ!わかってたんだよ!」と言いながらも物凄く嬉しそうだった。見てよ、二人の写真。最高じゃないか。
大内ライダーの到着にテンションを更にあげて、一同そのまま一緒に観光再開。シャッター商店街、という福井駅すぐ近くの商店街を練り歩く。ちなみにライダーはずっとライダーのままだった。

続・我が逃走

ちなみに大内ライダー、福井でも大人気。駅の売店のおばちゃん達に「写真撮らせてよ!」とせがまれてサービスする大内ライダーは、皆のヒーロー。
しかし、本当に有難うね大内君。僕達、君に元気づけられてばっかりだよ。

楽しい時間はあっという間に過ぎ去る。それはもう悲しいくらいに。でもそれがあるから次もまたそんな時間を作ろうと思うのだろう。
湿っぽいのは似合わない。山田君の外出時間が終わりそうだったので病院へ戻る。物凄く大きくて(そして結構重い)ウーハーを抱えて病室へ戻る山田君、ゾロゾロと付き添う一同。
ロビーに入った瞬間に「!?」ってな目で受付の人に見られるわ他の患者さんに「それ何!?」と驚かれるウーハー。そしてそれに対して「買っちゃったんだもん」と切り返す山田君。ストレスケア科に戻ると他の患者さんが「おかえりー」と山田君に声をかける。山田君、ここでも皆の人気者の様子。本当に、彼らしい。

回診の時間をまたいで、食堂的な雰囲気の何ていうんだろう、開けた場所で皆でお話する。設置されたTVでは先程までいた福井駅からの中継が流れており、患者さんが談笑しながらそれを眺めている。
ストレスケア科っていう言葉から受ける印象とは無縁のとても静かで朗らかで和む空間。ストレスケア科、だからこそなのかもしれないけれども、とても落ち着く。看護士さん達もニコニコしていてとても良い人達だった。山田君が快方に向かった理由が少しだけ理解出来た気がした。

続・我が逃走
山田ミュージアム。
斉藤一のイラストはプレゼントしてくれた。

続・我が逃走
山田君のベッド(とウーハー、キーボード)。
枕元には綾波レイのフィギュア。
物凄く、それらしい空間である。

続・我が逃走
「今度作業療法で改造しようと思って」
そんな事までやっていいのか作業療法!

和みつつ、談笑。
山田君、少なくとも僕達の前ではただの一度もネガティヴな部分を見せなかったし(むしろ自分を冗談のネタにするくらいの余裕さえ見せてくれた。や、流石の切れ味)、話によると随分と快方に向かっているとの事。本当に良かった。それを聞けて嬉しかったし、一緒に時間を重ねた事で僕自身本当に良いストレス発散になった。これじゃあどっちが見舞いに行ったかわからないけれども、改めて再認識出来たのは僕が面白おかしくやってくためには僕の人生にはこの男が必要だという事。そりゃあそうだ、もう人生の4分の1以上一緒に遊んでる。そしてこれからも色々な人を巻き込んで一緒に遊び倒すだろう。

続・我が逃走
看護師さんにお願いして集合写真。
そういえば他の入院患者さんに不完全~、聴いて頂いてる様子。
「ロリータが良かったです」とのコメントに恐縮しきり。

別れを惜しみつつ、福井厚生病院を後にする。
「次は俺が名古屋に遊びに行くよ」という名古屋の友人達への何よりの土産となる言葉も貰ったし、しばしのお別れだ、我が友よ!
ちなみに山田君、数時間後にはtwitter上でAKB総選挙でテンションがブチ上がっている様を目撃されている。相変わらずなんだな、そこは!

ソースカツ丼とおろしそばという福井名物を胃袋に叩き込み、さてどうするかと思案する一同。
HARD OFF巡りに参加出来なかった大内君。地方のリサイクルショップに行きながら彼がそれに参加してないって、オタクの彼に対する冒涜に等しいと思うので再び数件、リサイクルショップを巡りつつこの日めでたく27歳の誕生日を迎えた篠田君が「実家に帰る」というので1時間程車を走らせて石川県へ。
篠田君の生家を訪ねてお母さまにご挨拶し(これで篠田一家全員にお会いした事になる。感じの良い一家だ)、日本海を見に行く。

続・我が逃走
大内君と日本海。

伊藤「いやー、やっぱり太平洋より日本海の方が綺麗だね」

大内「…」

舟橋「お前!よく大内君の前でそんな事が言えるな!」
伊藤「え、いや、あの」

根っからのCoco壱ファン、伊藤誠人のたっての希望でCoco壱にピットイン。その店限定メニュー「石川県産のカレイを使ったカレイ&カレー」と「ポークを使った金沢カレー」、「カレーにあう味噌汁」を食べたのだが、特にカレイのフライが絶品!甘い醤油をかけて頂くのだけれどもホクホクして味も良く、あれは本当に食べて良かったなあ。
「食った食った」と今日一日で胃袋に放り込んだ大量の飲食物に思いを馳せながら、篠田君を実家に送り届けいざ名古屋へ戻り。反芻してる場合じゃないぞ、名古屋で本日の〆、大内ライダーはこれを食べるのも目的の一つ!いざ大丸ラーメンへ!
この日の大丸はまるで大内ライダーの来訪をねぎらうかのように旨かった。完食出来るか正直お店の前に行くまでは不安だったけれども、やっぱりいざとなると食べれてしまうのが大丸ラーメン。大内君も恐らく人生最後になるであろう大丸を楽しんだ様子。最近、遠方の友人達の大丸ラーメン、大橋さんへの想いに胸を熱くする事が多い。本当に愛されているお店なんだな。

7時に名古屋駅を出る大内君と一緒にサウナ兼温泉兼カプセルホテルへ。
入浴後、ビル内をうろうろして結局ロビーに落ち着いて話す。なかなかゆっくり話す機会もない二人だから、眠い目をこすりつつゆっくり話が出来て本当に良かった。大内君と話してると、やはり背筋が伸びる。この日弛緩しきったバンドマンとしての筋肉に、最後の最後で喝を入れられた気分。
楽しかった一日の、そして翌日以降再び始まる『日常』への良いカタパルトになったな、あの時間。

「じゃあ、また!」

「どうせすぐ会うさ!」

今まで何回繰り返したかわからない別れの言葉を繰り返して、大内君は東京へ戻って行った。

有難う、僕達のヒーロー大内ライダー。変身ベルトがなくても君は僕達のヒーローだ。
明るくなった今池の街をテクテク歩いて帰宅、即就寝。横になったらすぐに意識を失った。こうして沢山の友人達と遊び倒した一日は終わった。
本当に久しぶりにバンドの予定以外で遠出したけれども、凄く良かった。勿論福井の山田君を尋ねるっていう内容も良かったけれども、レクリエーションっていうのかな、ああいう『遊び』も必要なんだな。

最後に改めて。
山田君、また遊ぼうね!

コメント

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    いつも舟橋君のブログは面白いけれど、久しぶりにレベルの高い面白さでした。
    また不完全のライヴが見たいものです。

    山田君、快方に向かっているようで何よりでした。

    近々名古屋でお会いしましょう。

  2. 舟橋孝裕 より:

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    >ピコ・ピコリンさん
    不完全密室殺人、必ずやライブハウスのステージに戻ってみせます。いつとは確約できませんが、この現状においても誰も解散を口にしないというのは、つまりそういう事なのであります。

    是非、また!