SBV-550改のネックをオーダー、完成したので取りに行ってきた。

購入以来、僕のほとんどの演奏で使ってきたサーフグリーンのSBV-550、通称『初号機』。
僕のバンド活動歴とほとんどイコールの期間、様々な現場に連れまわして弾いてきた文字通り愛機であるのだが、少し前にLOVELESS GUITARの岡田さんにフレットのメンテナンスを頼んだ際に「トラスロッドの限界が近い」と教えて頂いた。
どうせこの先もこの楽器を長く使うのだから、と一念発起してネックをオーダーする事にし、その資金をコツコツとその時以来積立てていたのだが、ようやくまとまったお金が工面出来た。
と同じ頃に、ハイポジションでビビりが発生、演奏に差し障るものだから弐号機で各演奏を行うようにしていた

2023年1月某日、岐阜の工房へ初号機を持ち込み、相談の末にネックを一本作って頂く事に。その場で仕様等々決めたのだった。
以降は岡田さんから随時進捗を写真付きで教えて頂き、徐々に完成に向かっていくその様子にワクワクしっぱなしであった。
岡田さんからオーダー時に「ちなみにこれから、滅茶苦茶楽しいよ」と予告されたのだけど本当に楽しかった。自分のために世界で一本のネックが作られていく様はそりゃあ心躍る。

日々、様々なバンドでの演奏を弐号機で行い「ふむ、弐号機は弐号機でやはり良い楽器だ」と実感しつつ、高出力な上にノイズ対策が施されていない弐号機のノイズに悩んだりしつつ(結果的にはこれをかけっぱなしにしたりしていた)、初号機が戻ってきたらすぐさま弐号機も完璧な状態にしようとどんどん欲が出てきたのであった。

オーダーして3ヶ月が過ぎた頃、岡田さんから写真付きで完成報告を頂いた。
すぐにでも取りに行きたかったのだが京都遠征と家族との時間で1週間待機する事にし、満を持して完成したシン初号機を取りに行ったのであった。


指板はエボニー、ネックはメイプル。良い材を岡田さんが選んで下さった。トラスロッドは順反り方向にも逆反り方向にも効くもので、岡田さんお薦めの職人さんの手によるもの。ペグ等は旧ネックより移植。あ、フレットも1フレット増やして頂いた。


見てくれたまえよこの素敵なヘッド。
ボディの色合いは経年変化で焼けた色になっているものだから、出来るだけ違和感のないように岡田さんが苦心して良い色を出して下さった。YAMAHAロゴに代わりLovelessロゴ、音叉マークの代わりに黒猫マーク。猫アレルギーの僕が猫マークってのも面白い。あとトラスロッドカバーは材をジャストサイズに切り出して、マグネットではめ込むタイプ(「よっぽど吹き飛ぶ事はないと思うけど万が一吹き飛んだらまた作ります」と岡田さん。吹き飛ばないように落ち着いて演奏します)。お洒落!


新ネックを搭載したシン初号機と記念に持ち帰る事になった旧ネック。ネックの握りも再現して貰ったので違和感なし。
弾いた感触は知ってる楽器なのに新鮮な、何だか不思議な感じ。違和感はないけれども新しくなったような、ちょっとこれは味わった事のない感じで面白かった。

しっかりと乾燥させたとはいえ、工房と我が家の環境は違う故にこれから動くかもしれないこのネック、動くならどんな動き方をするかわからないという事で弾き終わった後はペグをそれぞれ1周分ずつ緩めておく事に。
弐号機のノイズ対策が終わった頃にまた岡田さんに状態を見て頂く事になった。
というか折角新しいネックを作って貰ったのだから、これからは作り手の元に小まめに持ち込んで良い状態を維持出来るようにしよう。

それにしても、だ。
定価5万円を切るような楽器のネックをオーダーするというのは正直10人いたら10人が納得するものではないだろう。いや、控えめな言い方はやめよう、ほとんどの人間が首を傾げるであろう。ネックオーダー、手にしやすい価格帯の楽器なら買えちゃうくらいのお金はかかっているので。
でも岡田さんはずっとこの楽器とこの楽器を使っている僕と向き合って下さっていたので(「プレイヤーには2種類いる、楽器を色々と手に取る人間と1本の楽器にどんどん手を加えて自分と一緒に育てていく人間。舟橋君は間違いなく後者」とは過去の岡田さんの弁)、SBVのネックをオーダーする事の意味合いを理解して頂いているだろうし、「本当にやるの?」だなんてベクトルの言葉は一瞬も出てこなかった。真摯に向き合って頂き、職人として仕事をして頂き本当に感謝しています。有難うございます。

また、相談した妻も「どうせあなたはこの楽器しか弾かないんだから、信用出来る人にきちんと対価をお支払いしてネックを作って貰った方が絶対に納得する。同じSBVの新品を買ったって納得するかはわからないんだし」ともう僕の事を120%理解した返答をしてくれた。
つくづく、周りに理解者ばかりで感謝しきりなのであった。

これからこの楽器とまた時間を重ねていく。どんな音楽、どんな演奏、どんな現場があるだろう。
さあ、これからもこの楽器と旅をしよう。