音の誘拐犯。

連日連夜のようにエフェクターの備忘録を書きつけるだなんて機材レビューブログのようだけれども、決して人様の参考になるようなレビューだったり普遍的な目線で感想を書いたり、内部基盤を覗いてみて「ああこういう回路なんですね」みたいな事を書くわけでもなく(というか、書けない)、あくまでただただ自分の自分による自分のための備忘録以上でも以下でもないこの日記。
これが冗談抜きで手持ちの機材について調べようと検索エンジンにペダルの名前を打ち込んで、自分の過去の日記に辿り着いて過去の自分の感想に触発されてペダルいじりが捗っちゃう事が結構あったりするのだから馬鹿にならない。


先日映画を観たその足で行きつけの中古ペダル屋で出会い、ほぼほぼ発作的に購入したMASF PEDALS Kidnapperについて今日は書く。
Kidnapper=誘拐犯とは言い得て妙だ。どんなギターやどんな信号を入力したとて、きっと元の音はかっさらわれてKidnapperの音になってしまうだろう、という妙な説得力が1秒弾いただけで感じられる。
ギターペダルに分類するならばファズになるのだろうけれども、これはそんな簡単に分類して良いのかと疑問を感じるブツだ。

元々はDODのBUZZBOXというこれまたトンデモナイ音のするペダルを再現しようと設計が始まったそうだが、最終的には回路的には全く共通項がなくなったとの事。Volume(音量です)とSaw(Gainなんだろうけど基準が滅茶苦茶高いのか途中から変化なんて感じられんくなるよ)、あとはOctavaスイッチによって-1オクターブなのか-2オクターブなのか選べる。
Octaveスイッチで結構出音の印象が変わってくるのだが、いずれにしてもベースギターで単音をボーーーンと弾くと入力信号の減衰に応じてセンシティヴに反応するのか、ファズが目まぐるしく色々な表情をみせてくれる。かなり強引かつ強力な音ながらその混沌っぷりが音楽的に感じられるのがMASF PEDALSの凄いところ。このペダルと同じように「制御するのではなくこのペダルに制御されたい」と思ってしまう。

ここまで書いておいてナンだけれども、このKidnapper、ブランド側が推奨するのが同社のコンタクトマイクを接続して使用する事。動画等でその様を観る事が出来るけれども、入力信号に対してセンシティヴに『反応』して様々な表情を見せるところなんてまさにコンタクトマイクを用いたノイズ演奏にうってつけ。コンタクトマイクとこれがあればもうそれだけで結構格好良い事やらかせちゃうんじゃないの、と思える。
かくいう僕もベースギターに繋いで弾くよりも(コンタクトマイク→Kidnapperと繋いでそれをLS-2に入れて、足元切り替えでベースアンプから打撃ノイズとかハーシュノイズを出せるようにした方がKidnapperの持ち味を僕の音楽活動中で表現出来るんではなかろうか)とか夢想している次第である。

繋いで格好良い事、やってやろうという気になるペダルである。
追記:スタジオでベースギターに繋いで大音量で鳴らしたところ、こちらが「ボーーーン」と鳴らしたり止めたりするだけで多種多様なノイズが出てそれにリバーブとかディレイとかけたりしたら最高に気持ち良かったです。バンドアンサンブル中だとなかなかベースギターとしての役割が問われるかもしれないけれども、やっぱりKidnapper、良いペダルです。