Reverb.comで買い物をしてみた。

何がきっかけで欲しくなったかさえ定かではない程に以前から欲しかったペダルがあるのだが、先日念願叶ってようやく手に入れる事が出来た。
喜びを噛み締めながら一畳半の自部屋で鳴らしているのだけれども、早速ファーストインプレッションを日記に書く前に手に入れる事が出来た経緯について記録に残しておこうと思う。
経緯、と書くと大袈裟だな。単純に売買サイトで手に入れたのだから。だけども取引相手が海外という点は人生で初めての体験であった。

楽器愛好家、とりわけ蒐集家や特定の楽器を探している愛好家が頻繁にのぞいているwebサイトに「Reverb.com」というサイトがある。
世界規模で知られており、個人から店舗、現行品のみならずビンテージまで出品される超大手サイトである。その存在自体は知っていた上に何なら一度はスマホ用のアプリまでインストールしたのだが、僕はなかなかここで買い物する事に消極的なのであった。
だって、品揃えというか売りに出されているアイテムの幅が日本国内のショップではお目にかかれないようなあんなものからこんなものまで、いやはやとんでもない物療なのだ。ここで買う事をおぼえたらきっと僕はとんでもない事になる。
「お金さえ払えば欲しいものが手に入るのだ」という実感は危険だ。財布の紐と家庭の平和のためにも楽器との出会いには「縁」が何より大切なのだと思っておきたい。世界の愛好家達を相手にするには舟橋の財布はいささか心許ないのだ。自分の物欲に従っていては何度破産すれば良いのか、正直なところ僕にも未知数なのである。

さて、僕が欲しいペダルはReverb.comに定期的に出品されては買い手がついているようだったが、生産完了品で日本国内ではほとんどお目にかかれないブツであるとはいってもそれが行きつけの中古ペダル屋で売られている頃に目にした中古価格と比べて、Reverb.comで海外のコレクターが値付けしたそれは随分と高価に感じられたのであった。
きっと日本の、どこかの楽器屋さんの売り場だかオンラインショップだかで出会う事が出来る。僕はそう信じてReverb.comのアプリを開いては半ば溜息をつきながら閉じていたのであった。

3月は誕生日である。
件のペダルについて「憧れなんだよね」と妻に話すと「本当に欲しいのだったら高価でも買って良い」と許可が出た。いや、まさか!妻の有難い申し出は、しかし同時に突拍子もない事のように思われた。今やReverb.comで目にするそれの値段は、新品価格の1.5倍程になっていたので。
しかし僕は同時に理解もしていた。今後値段が今より上がる事はあっても、きっと下がる事はないだろうと。数年前に中古屋の店頭で見かけたあの時と、ヤフーオークションで半ばジャンクだけれども3万円まで値段が釣り上がり結果的に競り負けたあの時と、今も、そして恐らくはこれからも同じ値段で買う事は出来ないのだ。

出品しているカナダのベーシストに試しに値段交渉を送ってみた。Reverb.comは原則値段交渉を投げかけ、先方がそれに応じてくれたら購入するシステムである。この段階で半ば妻の提案に甘えた形になる。
仕事の昼休憩時に投げかけたその値段交渉だが、こちらの言い値ではなかったものの先方から代案で提示された金額も十分に魅力的であった。
よし、買うか。

こうして人生初、海外からの買い物が始まったのであった。アプリは日本語対応なので値段交渉に応じる旨のボタンを押し、「i will buy it.」と先方に告げる。
決済方法をクレジットカードに指定し、これうまくいくかなあとドキドキしながら入力を進めていったが難なくクリア。
自分の住所を入力し先方に告げた後、急に不安になって見直したところ住所の表記に過ちが見つかった。電話番号も国際間で使える表記ではないものだった。今時は便利だ、住所を打ち込むと海外用に変換してくれるサイトもすぐに見つかった。
過ちを謝罪し、こちらが正しい住所だと今回の売り手=カナダのベーシスト、エリック氏に伝える。

エリック氏は出品慣れしているようですぐに発送通知が来た。カナダとの時差がどれほどかはわからないが、滅茶苦茶早い。海外の売り手は発送がのんびりしているとばかり思っていたけれどさにあらず、取引終了時までエリック氏は下手な日本国内の取引相手より安全確実迅速だったのであった。
先方が発送と同時に商品につけたtraffic numberにより、商品の追跡情報を確認する事もReverb.comのアプリ上で出来る。


CanadaPost(カナダの郵便局)のサイトの方が詳細な追跡情報が確認出来た。カナダから日本に向かって海を渡ったところから追跡は荷受け国のサービスで追跡してくれ云々、というメッセージが表示されたので日本郵便さんの追跡サービスにエリック氏から教えて貰ったtraffic numberを入力、「国際交換局に到着」と表示された時は嬉しかった。凄い、本当に海を越えてきたぞ!
しかし上の画像からわかる通り、カナダで引き受けた段階から追跡登録されていたので最初から日本郵便さんの追跡サービスで見ていても良かったのかもしれない。外国の追跡サービスを閲覧するのもそれはそれで気分が上がったけれども。

ちなみにエリック氏とのやりとりに於いてはGoogle翻訳を用いた。先方からすれば片言英語みたいな文章になったかもしれないが、コミュニケーションには大変役に立った。
Reverb.comのアプリケーション上でのメッセージのやりとりで、エリック氏が大変行き届いた配慮をしてくれるナイスガイである事がわかった。
梱包前後の写真、そして宛先を書いたラベル面、カナダの郵便局で差し出す様子まで全て写真で送ってくれ、こちらに配達された日には「配達されたようだぜ!」とメッセージをくれた。
途中、あまりのエリック氏の優しさに「日本の名産品を送るよ」とかなんとかメッセージを送りそうになった。カナダ在住のエリック氏が日本の名産品と聞いて何を連想するかわからないが、いずれにしてもエリック氏を驚かせる事にならなくて良かった。きっとそこまでの関係をエリック氏は望んでいないであろうから。
「about 12 business days」=「約12営業日」で届くとエリック氏が教えてくれたが、実際はそこまでかからなかった。約1週間でこのペダルは自宅に届いたのであった。


これがポストに入っていた時の興奮たるや!
遂に海の向こうから拙宅にブツが届いたのである!
税関で中身の確認のために一度開封しましたよ、というテープが貼られていた。構わん構わん、どれだけでも確認してくれい。
ちなみに関税っていうの?そういうのはかからなかった。購入する前にReverb.comで買い物をした人の体験記を色々と読んでいた際に「2021年現在、楽器には関税はかからないそうです」みたいな記述を読んだ。定かではないけれども商品到着して3日後の今現在もReverb.com上でエリック氏とやりとりした以外の支払いは発生していない。


箱を開封するとエリック氏の丁寧な仕事に溜息が漏れる。
この梱包材も初めて目にするタイプだ。思うに、エリック氏は出品慣れしているし律儀な性格なのだろう。
良い出品者から購入する事が出来て良かった。すぐに動作確認して商品の受取通知を兼ねたエリック氏への評価を入力する。
勿論、満点だ。
それにしても、一つのペダルが遠く離れたカナダから海を渡って拙宅まで届いたのかと思うと壮大なロマンを感じる。

こうして僕はますます沼の深みにハマりそうだ。
商品によっては送料を含めても日本国内で買うより安いんだもの、こりゃあ、やばい。