部屋と機材棚とエフェクターと私。

改めて。
エフェクター蒐集は僕の趣味の一つだ。

これも以前この日記に書いたかもしれないが、僕がこの「趣味」を実感したのは確か30代も半ばにさしかかろうかという頃、実に人生で初めてエフェクターを買ってから15年以上が経過してからだった。
最初の頃こそ節度を弁えてエフェクターを手にしていたものの、その数が10を超える頃からはもう知らない音を手に入れる事自体が楽しくて、財布事情が許す限りどんどん買い足していった。自宅のエフェクターの個数が20を超える頃(これは鮮明に憶えているのだが20歳の誕生日にはビッグマフを人生で20個目のエフェクターとして購入した)には、当時としては生産完了品で少しプレミア価格がついているようなものも意識するようになり「あれが凄いらしい」と聞くとそれだけでそのエフェクターが欲しくなって多少無理して買ってしまったりしていた。
当時はまだYoutubeも今程一般的でなく、エフェクターの情報は動画ではなく人様のレビューでその人なりの感性、言葉で評価されているものを参考にするか、実際に自分で実機を触ってみる他、得ようがなかった。
そんな感覚でエフェクターを買い集めていたがあくまで僕としてはバンド活動にとって「必要なもの」を買い求めているに過ぎず、どれだけ「いやそれどこで使うの」と揶揄されようと内心(既成概念に囚われた事しか出来ないなら音楽なんて辞めちまえ)と思っていた。

エフェクターに費やしたお金で家は建たないが車は買えたな、と悟った頃、まだ僕はエフェクター蒐集を趣味だと認めていなかった。
「エフェクターは実際に買って自分の足元に置いてスタジオやライブハウスに持ち込んで鳴らしてみないとその真価はわからない。また、トライ&エラーを積み重ね続ける事で、エフェクターに対する自分の審美眼を磨いていけるはずだ。そしてそれは音楽を演奏する際の説得力にも繋がるはずである」からこそ、僕は兎に角、買った。
時には売って、買った(一度手放したエフェクターを買い戻す事を何度か経験したので今現在、もうエフェクターは売らない事に決めている)。

だがある日突然「いや明らかに表現欲求に対しての自分の回答以上に買ってないだろうか」という事に気が付いたのだ。最初にワウペダルを(人生で最初のペダルがワウペダルというのは珍しいようだ)買ったあの日から、こうなる事がわかっていたのではないだろうか。繋いでオンにするだけで楽器の音色が変わる。この当たり前の事に夢中になり、今尚夢中になり続けているのだ。
変化と変化をかけ合わせると、更なる変化を生み出す事も面白かった。時に予測不可能な効果を生み出すからこそ、初期衝動を失う事は全くなかった。
よくもまあ飽きる事もなく、と言われてもしょうがないが飽きる暇さえなかったのである(つまりこれは、エフェクターを買って実践投入する場=バンド活動が絶えなかったという大変有難い事実に行き当たる。やはり自室でシコシコ弾くだけで終わってしまうのはなんだかなぁ、という気持ちに自分自身はなってしまうので)。

さて、そんな僕のエフェクター蒐集だが中にはスタジオやライブハウスに持ち込んで多くの時間を重ねていないからこそ、この日記に備忘録をつける事が出来ていない機種も存在する。
そのうちいずれ、と思ってはいるのだがそれ以上に興味をそそられるエフェクターがあったり、となんだかんだでまだよくお互いに知り合えていない連中だ。
そんな連中が機材棚の中で少しばかり目立つようになってきた。「自分達は、いつ」と期待と恨みのこもった視線さえ感じる。
重たい腰を上げてまずは自宅にて鳴らしてみる事にする。
ひょっとしたらこれがきっかけでスタジオやライブに持ち込むかもしれないし。

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というわけで、Aguila AGROである。
これ、買ったのは確かオーバードライブを色々探し求めていた時期だったかな。あ、いや、その後だったかもしれない。割と歪みは「お、良さそう」というのが見つかると足元が安定していても手を出してしまいがち。
Aguilarといえばベースアンプであるけれども、実はお恥ずかしながらこのメーカーのアンプもエフェクターも然程触った事がない。ただAGROだけはその昔、名古屋のベーシストが集まって音出しをしながら飲み会をやった時に先輩が持ってきていてちょろっと触らせて貰って良い印象が残っていた。
音量を設定するLEVEL、歪み具合(オーバードライブ~ディストーション間を行ったり来たり出来る)の調節のSATURATION、超高域の調節のPRESENCE、そしてミドル(900hzらしい)の調節とコントロールはシンプル極まりないけれども流石Aguilar、ローエンドが全く削げない。これなら原音ブレンド機能なんていらないだろう。
出音としては高域のエッジの効いた音。「歪んでしまった」的な音というよりかは攻撃的に「歪ませてやったぞオラ!」的な音がしており、僕の印象としては『扱いやすいBOSS ODB-3』。まとまりが良く、ハイミッド~プレゼンスについては細やかな調節も出来るし、何よりローの調節の必要がないのがこんなに安心感に繋がるとは。「低域の心配はせずにどんどん攻撃的におなりなさい」とエフェクターに言われているようだ。
ちなみに筐体は堅牢そのもの、重量感もそれなりにある。
ジャック部分を保護するような筐体の仕組みになっているのでL字のプラグは差し込んで使いにくいかもしれない。

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