電子部品の歌、あるいは悲鳴、あるいは怒号を使いこなしたいという欲求だけはずっと持っている。

ベースギター演奏を20年以上続けてきて最近思っているのが「もう一つ楽器をやってみたいな」という事。
何もエレクトリック・ベースギターに飽きたわけではないしベースギターで表現出来ない事がある、とかそういう話でもない。
エレクトリック・ベースギターと大量のペダルがあれば森羅万象を表現する事は可能であると今も思っている。

「もう一つ楽器をやってみたい」というよりかは非常に不定形な音を出したい、という欲求の方が近い。
不定形、というか不明瞭かつ制御不能な音に対する『憧れ』に近い。
ノイズとかそういう音に対する欲求っていうのは昔からずっとあって、それの延長線上でファズとかカマしてゴーッとやっているようなものだ。そういう暴力的なノイズに対する憧れと並行して柔らかい電子音への憧れも抱いている。
そしてベースギターはそのまま使えば非常に『明瞭かつ明確』な楽器であるが故に『制御不能』で『不明瞭』な音に憧れている。
No Input Mixing Board演奏に着手してみたのはそういった感情からなのだが、制御不能で予測不可能、何なら再現不可能で暴力的な音からペダルを通して柔らかい音まで出せる事は実感したのだが、そういう出音を「バンドアンサンブルの中で使ってみる」という目標はまだ達せていない。

電子部品が繰り広げる悲鳴とも歓声とも囁きともとれるような音について色々調べているとelectro-harmonixのRTG(Random Tone Generator)についての動画に行き当たり、スイッチ一つとツマミ一つのこの「電子音を出力し続ける」変なペダル、そういえば持っていたなあと思って機材棚をひっくり返してみたのだがどうにも見つからない。
かつてライブで使った日記だけは出てきたのだが、そうかそれがもう10年前なのか。
実は一度極度の金欠に陥って、使っていない楽器等々を一斉に処分した事があったのだが恐らくはその時に売り払ってしまったに違いない。自分の嗜好がこうなる事がわかっていたら手放す事はなかったのだが云々と考えながら機材棚をあーでもないこーでもないとしているとそういえばこんな珍品を友人から譲って貰ったのだった。


埃まみれでナンだけれども、BOSS PC-2 パーカッション・シンセサイザーである。
譲ってくれた友人は「パーシーちゃん」だなんて呼んでいたけれども、要するにゴムパッドの部分を叩く事で上側のコントロール部分で作ったシンセ音を出力してくれる楽器である。一応インプットも付いているのでベースとかギターとかを入力して、その入力音をトリガーとして使う事も出来るようである。
各ツマミと筐体上部のスライドスイッチで「ピュイーーン ピュイーーン」という音から「ドゥルルルル ドゥルルルル」というような音まで出る。入力感度もコントロール出来るのでドラムスティック等でブッ叩かずとも、指でゴムパッドを叩くだけで十分音を出す事が出来る。

面白い楽器だと思うけれども、市場に出回っている価格からすると果たして自分自身が購入する事があったか疑問ではあるので友人に感謝。いつか機会があったらライブ等で使ってみたいと思う。
しかしこういうのも良いが、やっぱりシンプルにノイズ・オシレーターみたいなの買った方が僕は楽しんで演奏出来るのかもしれない。