スタジオを捜し求めて。

バンドマンの生活を圧迫するものの一つに「スタジオ料金」がある。

ドラムセットにアンプリファイアを鳴らすには相応に整った環境、防音設備が必要でありそれを自宅に有するバンドマンは兎も角(山の中に所有する物置小屋をスタジオに改造したバンドマンや、周囲に民家が無いので自宅で練習可能な友人はいた。彼らは例外として話を進める)としても、バンド練習を挙行するには所謂「練習スタジオ」へ赴く必要があり、場所を借りて練習するという事は当然の流れとしてスタジオ料金が発生する。

日夜練習を繰り返すバンドマンからすればそれは必要経費、払って当たり前の出費ではあれども週に何度もスタジオ篭りを敢行すると、月に財布から出て行くスタジオ代も馬鹿にならないものだ。

それ以外に節約するところもあるだろうに、とは思うのだけれども安易な僕はスタジオ代の工面で頭が一杯になる時があるのだ。ああ、小市民。安くて、しかもそれでいて練習しやすい環境(これは何も高級な機材に音のまわりが少ないスタジオが望ましいとかそういう事ではない。そこまで贅沢は言わない)を望むのだから僕という人間の了見が如何に狭いかがよくわかろうというものだ。

で、名古屋某所に安い練習スタジオがあると聞いたので行ってみた。情報を教えてくれた友人の口調では「確かに安い。けどね・・・」という感じだったので興味がそそられたのも事実だ。友人から聞き出した所によると、そこで練習すればスタジオ使用料金が今までの3分の1程度で済んでしまう。知り得る限りそこ以上に安い所は他にないのに、何故皆そこへ行かないのか、何となく想像はつくものの興味があった。

で、実際に昨夜パイプカットマミヰズの練習で現地に赴いた。

事前に友人から色々話は聞いていたものの、そのスタジオは相当なインパクトがあった。

1.スタジオはカラオケボックスの地下に併設されている。

2.スタジオ内は独特の匂いがする。

3.スタジオ内にはカラオケルームにあるようなソファが置いてある。

4.スタジオ内には小蝿がいたりする。

5.スタジオ使用中に上の階で喧嘩があったらしく、警察官が何人も上の階へ上がっていった。

6.受付をしているとカラオケ利用客と鉢合わせる。

こうして列挙するだけでそこが如何にユニークな場所か知れようというものだけれども、友人の言った通り確かに安かった。深夜料金という条件はつけども、6時間の練習で一人あたま1000円をきってしまったのは驚異的で、僕はもうこの料金を店員さんに確認した段階で、如何に部屋の環境が劣悪だろうと音が出せるなら、そこで音が出せるならもう来週からここで練習するべきだと感じていた。僕は潔癖症ではないし、どんな環境でも自分達の音楽が演奏出来るようでありたいし(機材がよくなかったから演奏が駄目でした、とかあまり格好良いと思わない。人間最後は気合、なのである)、ならば男4人が夜な夜な集まって明け方まで音を出す、デカい音量で音を出す、その環境をこの値段で提供して下さるならば深々と頭を下げようと、そう思った。

で、スタジオに入らんと大量の機材を抱えて地下への階段を下りた。

真っ先に思い出したのは大学時代、毎年夏に過ごしていた長野県は斑尾高原でのサークルの夏合宿の風景。あの冬場は恐らく更衣室として使われていると思しき部屋の、あのカビてくすんだ匂い、あの匂いに似た匂いがその地下ロビーにはあった。人によっては顔をしかめるかもしれない。しかし僕は懐かしいこの感覚に顔を綻ばせてしまう。そしてスタジオのドア。よく練習スタジオで見る頑健な防音扉ではなく、気持ち程度に防音してくれる扉。そりゃあ音もダダ漏れだろうよ。スタジオ内も明らかに「元カラオケルーム」であり、機材を置いた僕と吉田君はお互いの夏合宿(大学が違う僕達は勿論違うサークルでそれぞれ夏合宿に赴いたのだけれども、名古屋の軽音サークルって恐らく大抵は斑尾高原で夏合宿を行っている。よってホテルも似たり寄ったり、場合によっては他大学とはちあわせたりもする)を思い出したのであった。

「いいじゃあないか」

「いいね」

実際、音を出してみてもなかなか快適な練習環境である。そうそう、忘れてはいけないのが、そのようなカラオケの地下で併設されているスタジオの割に、というか普通に機材がシッカリしたものが揃えられていた事だ。JC-120のインプット・ジャックが吹っ飛んでなくなっていたりはしたものの、全て不備なく動き予備のアンプも地下ロビーに置いてある。

結構な音量を出していたはずだけれども、店員さんからストップも入らず無事に5時間の練習を完走する事が出来た。2階のトイレに上がる際に他のカラオケ利用客と出くわして、その温度差に驚く事はあったけれどもそれすらも趣がある。

僕達の感覚はそれぞれの大学時代(とは言っても僕は卒業後も遊びに行っていたし、吉田君駒田君にいたってはOB2年目に突入したばかりなのでさほど昔でもないのだが)に立ち返り、興奮して練習を終える事が出来た。

続・我が逃走-CA390944.JPG
地下ロビーにて。
スタジオにはTK君が遊びに来たよ。

結論。

来週からもそこ使います。最高!

コメント

  1. フェイ より:

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    出た!○見の不思議のダンジョン!
    僕も名古屋に来たての頃はお世話になったよ。

  2. 舟橋孝裕 より:

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    >フェイさん
    やっぱり有名な場所なんだねw
    不思議のダンジョンたあ良い表現だw