近頃は納得のいく音も出せているし興味深いファズとの出会いもあったりで演奏活動(=表現活動)に於ける機材蒐集については大変満足度が高い状況が続いているのだが、久しぶりに「これは買わずにはいられない」というペダルと出会ってしまった。
自覚の上では僕のバンド活動や演奏行動の90%を超える程の時間で出力している『YAMAHA SBVをサンズアンプやらその他諸々(最近はこっちも大事だと痛感してる)に通してバチコン!とピックで弾くドスの効いた軽く歪んだ音』がそのまま僕の演奏に於ける文法であり何なら「僕そのものだと思うくらいにこれっきゃないと思っている/バンドサウンドに於けるプレーンなベースギターの音ってこういうものだろうと思っている」し、人様から有難い事に「ベース弾いてよ」と言われる時はもう大概、特別な注文だったり「こうしてよ」がない限りはこういう質感の出音を求められている事がほとんどで、その現状に於いては自身の演奏行動を継続する上でこういう自分の『声』みたいなものを見つける事が出来ただけでも幸せだよなあと思っているのだが、近年は他にも『鳴らしたい音』が存在する。
この『鳴らしたい音』は普段90%を超える程の時間で出力している(中略)ベースギターの音とは大きく異なるもので、バンド活動に於いて必要とされるものではないしその音が出ないと現在のバンド活動に支障が生じるものでは全く、ない。
しかしながら2017年5月、四国の銭湯の中で「かくも美しい瞬間が存在するのか」と思い知って以降、頭の中で時に鮮明に時に曖昧に鳴るその音/空間をどうにかして自分の手によって演奏として出力したいという欲求には抗えずこれまでも手を変え(文字通り)品を変え挑み続けてきた次第なのだが、生憎と2026年7月現在に於いてもその欲求は満たされてはいないのであった。
「しないではいられない事をし続けなさい(水木しげる先生)」ではないけれども何度も挑み何度も挫折し続けているうちに「これを成し得ればともすれば別の文法を僕は得るのかもしれない」という考えに至り、未知のものを表現しようとする事こそが表現者の本懐なれば、シンセサイザー等を用いた方がきっと(物凄く)目的完了には近道であろうけれども敢えてエレクトリックベースギターでその音に挑み続ける事が僕の到達したい表現の1点なのだなと思って失敗し続けている次第である。
前置きが長くなった。
敢えて言語化するなら「意識せずともその場に存在し得、空間を漂うように鳴っていながらも美しく静謐で広がりのあるエレクトリックベースギター由来の音」を表現する為に新しくペダルを購入した。
その備忘録の、恐らくは第1弾である。
そのペダルの存在を知ったのは確かインターネット上にアップロードされているショート動画という極めて現代的かつドラマ性もへったくれもない、しかしながら偶然性を伴う(次々に再生されるショート動画自体には間違いなく僕の志向が反映されているのだろうけれども)その出会いは相応の衝撃を伴っており「このペダルを手に入れる他、方法はない」と僕に思い知らせるには十分過ぎる衝撃を伴っていたのであった。
だが果たして相応の実売価格がするそのペダルを気軽に購入して良いものか本当の決定権者である妻に相談する前段階で吟味する必要があると考え、時に通勤の往路復路で時に模型製作を行いながら時に娘(長女、次女)の寝かしつけ時にそのペダルに関する長短入り混じった国内外の様々な動画を観狂った。実際にベースギターで運用している海外の演奏家諸氏の動画は大変役に立った事を追記しておく。
さて、いよいよもってこれは手に入れるしかないと確信に至り妻に交渉→ゴーサインが出たので(妻は割と簡単にゴーサインを出す。それであるが故に交渉前段階で慎重にならざるを得ない。これを意図してやっているのであれば妻は相当心理戦に長けた人間であるといわざるを得ない)、世話になっている楽器店店員S氏に「発売を目前に控えているファズペダルのホールドをお願いしてはいたのだが、どうしてもこれが必要だ。申し訳ないがこれを購入する事は出来るだろうか」と相談。
1週間もせずにペダルの店舗到着の知らせを貰い、仕事の出張=研修後の直帰時にその足で購入に向かったのだった。
(ペダル到着の知らせと同時にS氏が離職する旨の知らせも頂いた。これまで幾度となく世話になったし本件に於いても楽器店店員のみならず同じ演奏家としてアドバイスを貰った。そこまでしてくれるS氏の離職は寂しくあると同時に僕自身の事を考えると誰に頼れば良いかと心配であるけれども、そもそも同じベーシストとして知り合った以上これでご縁が途絶える事はないという一点は安心出来る。引き続き同好の士として宜しくお願いしたい次第であります。感謝!)

というわけでMXR layersが僕のペダルボードにやって来た。
MXRのペダルを新品で購入するのは記憶にある限り初めてではなかろうか。
MXR製品とはこれまでの演奏活動の中でも折に触れて親しんできたけれども(BLUE BOXに対する愛着等は記憶に新しい)、相変わらずの筐体に同社のイメージを覆す程に斬新な機能を搭載しているという事で実に新鮮な印象を受けた。
浅学でお恥ずかしいのだが、ショート動画で出会うまでこんなペダルが存在しているだなんて知らなかった。
平たくいえば「入力信号を有限/無限に引き延ばしてそれをレイヤー上に重ねる事が出来る」ペダルである。
最近electro-harmonix社のFREEZEでドローンサウンドを作らんと挑み、実際にライブ演奏に於いて出力、演奏したりもしたけれどもその際に感じた「嗚呼、この音に更に同じような音を重ねる事が出来ればなァ」という欲求が高次元で実現出来るペダルである。
以下、簡単にコントロールについて
・MIX=エフェクトシグナルのレベルコントロール
・TRIG=トリガー。ここで設定した以上の入力レベルの音を自動検知、自動的にエフェクトしてくれる。オフにも出来る。
・ATTACK=エフェクトシグナルのアタックコントロール。所謂swell機能の調整。右に回していくとエフェクトシグナルがフェードインしてくるようになる。
・DECAY=エフェクトシグナルの長さ。右に回す程音が伸びるようになる。右に回しきると『∞』。無限に伸びるようになる。
以下、スイッチ2種について。
・SINGLE=シングルモードのオン/オフ切替。オフ状態では音のレイヤーを3つまで重ねる事が出来る。
・SUB OCT=エフェクトシグナルにサブオクターブを追加。
ザッと簡単に書きだすとこんな感じなのだが、それぞれ裏モードというかマニュアル上では『高度な設定』としてキルドライモードだったりエフェクトシグナルにコーラスやモジュレーションをかけたり、外部接続(ここもエクスプレッションペダルを繋ぐモードだったりフットスイッチを接続するモードだったりを選ぶ事が出来る)で足元で色々コントロール出来るようになったり等、実に様々な機能が備わっている。これはじっくり触っていかねばなるまい。
高度な設定を除いて直感的にパッと触ってみてもATTACKコントロールで弾いた音から直接的に音が伸びていくのか否か(音の立ち上がりとそのカーブをコントロールするのか)コントロール出来るのは想像力を刺激するし(音が鳴っていない間の事も連想して刺激されるのも興味深い)、DECAYで変化する音の長さは有限の間でさえリバーブ等の残響系と異なるテクスチャーを持ち、無限となると最早そういう楽器なのではないかと感じられたり、TRIGコントロールはこれ、思っていたよりもセンシティヴであるが故にコンプレッサーの前に本機を接続した方が扱いやすいんじゃなかろうか、いやむしろ想像だにしないところから音が伸びるような認知と異なる挙動を楽しむのも有りなんじゃないか等、実に多くの事を感じさせられた。
ちなみにTRIGをオフにするとフットスイッチをオンにした瞬間になっている音をサンプリングして延長してくれる。この無限に広がるレイヤーとそれが重なる事で広がるアンビエントをある程度の意識下で構築していくのであればその運用方法の方が自身の認知に対してエラーは起きないんじゃないのかな、だなんて思った。
ある程度弾いて一息つこうとペダルを手で触ったところ(あ、エフェクトをオフにするにはフットスイッチをダブルクリックすれば良い)思っていたよりもペダル本体が温かくなっている事に気がついて驚いた。
すわ異常動作か、とアダプターを付属のものに変えてみたりあれこれ試してみたけれどもどうやら正常な反応のようだ。
そりゃあこれだけの事をこのコンパクトな筐体の中に納まった回路で処理しているのだもんな、多少の放熱はあろうて。
以上、layers導入初日の備忘録。
高度な設定もまだ触れていない状態なので、音のレイヤーを重ねるようにlayersに関する認識や理解を重ねていこうと思う。