「アクロバティックなお寿司」

25日(実質的には26日午前未明)、友人宅で鍋をつつく。
引っ越してきたばかりの、何であればまだ寝袋で寝なければならないような部屋で僕を待ち構えていたのは達成感と自信に満ち溢れた友人の顔と、煮えたぎった火鍋だった。

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この真っ赤な鍋にキャベツやしめじや各種出汁汁で下茹でされた食材をくぐらせて、しゃぶしゃぶのようにして食べる。鶏ガラスープに聞いた事もないような香辛料を沢山ブチ込んで、調理した友人も「聞いた事のないスパイスを結構買った」と言っていた。また、この中には角煮が沈んでいる。
一口食べて「ブラヴォー!」と賛美の言葉が口をついて出た。程良く下茹でされた野菜の食感を殺す事なく、辛くて、しかしそれだけじゃない奥行と旨みのある味。本当に旨かった。大量に食って、〆にはラーメンを投入して、あまつさえ白米にこの煮汁をぶっかけてまで食った。最高だった。タフな料理だ、火鍋。

友人が「きっと気に入るから」と貸してくれた漫画を読み耽っていたら気がつけば朝で、午前11時からの練習に寝坊してしまう。そう、この日はパイプカツトマミヰズで池下CLUB UPSETにて行われたKAGEROレコ発ツアー名古屋場所へ出演。共演はpalitextdestroyバズマザーズ、そして勝手にライバルだと思っているぞクウチュウ戦にレコ発で名古屋へ襲来!KAGERO。実に実に強靭なラインナップ。”強い”バンドの見本市、ライブハウスで行われる天下一武道会!
ここまで強豪を集めたUPSET 中井さんに拍手、敬礼!

パイプカツトマミヰズの出番は一組目。この後に強靭なバンド達の演奏が続く、というのはこれはもう明確にわかっていたけれども、それを念頭に置くでもなく気にするでもなく、肩の力を抜いて出て行った。このバンドに於いては肩に力を入れてもどうしようもなく、やる気とモチベーションと精神的な余裕を懐にその場を全力で楽しむように演奏するのが良いに決まっている。その状態でも良い演奏が出来るだけの経験知はメンバー個々人、積んできている。
今回のライブに向けての  練  習  時  間  は  少  な  か  っ  た  が  な  。
結果、手応えのある演奏を感じる事が出来た。モチベーションとオラァ感はそのまま何のフィルターを通す事もなく演奏に反映され、演奏中に「今日は良いからどこまでもいっちゃおう」というのを確信するくらい自由に演奏する事が出来た。あの快感を味わいたくて、あの快楽っていうのを常に毎回味わいたくてバンドを続けている。
どうやら主観と客観が一致するようなライブだったらしく楽屋に戻ると共演者からの「やりやがったな」的な笑顔とコメントが待っていた。
しかしね、何が清々しいってそういう事を言っていた人達がそのあと尽く、本当に素晴らしい演奏を立て続けにしていった事である。

二番目のクウチュウ戦は「これがプログレだ」と喉元に突きつけるような構築美とアンサンブル。僕はあのクウチュウ戦の演奏にフロアの空気が飲み込まれる瞬間が好きだ。胸がすくような気持ちになる。早くあのバンドを国家第一種プログレバンドに指定してくれ、何らかの国の機関よ。
palitextdestroyでは伊藤誠人が再びステージへ。あの人ってパイプカツト~で一緒に演奏してる時と明確に違うっていうのが共演すると尚更、わかる。この人達も強靭なバンドなのだけれどもこの日はいつもより増してその強靭さに拍車がかかっているように思えたのは気のせいだろうか。
バズマザーズはせんちょー(ナナフシ/JONNYサポート 他)がサポートでドラムを叩くようになってから初見。もうびっくりするくらいマッチョイズムを感じさせるバンドになっていて、しかもそれが体育会系っていうのではなくバンドとしての筋肉、演奏の気迫の顕在化って意味でマッチョ。場末でマッチョで、どこかデカダン。デカダンって単語、この人達と出会ってから知ったのだけど。
そしてKAGERO。もう何なんですか先輩達!強いだけじゃないんだぜ、アーバンでもあるんだぜ、って懐の広さを見せつける演奏をしたかと思えばやっぱりバンドの血肉を使ったバッキバキの演奏もされる辺り、ええ、素直に申し上げますと悔しいです。白水さんのベースの歪み(チラッと観に行ったらベースビッグマフ一発。潔過ぎです、先輩!)具合も格好良かったなあ。

本当の意味で対バンって、こういう事だ。
音楽的には完全に一致するものはなくともどこか精神的な部分だったり気概的な部分で共通するものはあったであろうこの5バンド、「オラオラ」とお互い殴り合うような演奏を披露しあえたのではないかと思う。本当に美しいイベントだった。あんな夜があるから、まだまだ強くなりたいと切実に思う。
KAGERO、そしてクウチュウ戦、レコ発おめでとうございます。
バズマザーズもpalitextdestroyもまたお相手願います。

本当に楽しかったな、この日。

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楽しそうな僕達。
ヨシダユキ先生撮影。

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