『最高の三十代殺人事件』に関する備忘録。

5月5日、父親の誕生日に旧友・九鬼君から久しぶりにLINEが来た。
内容は「今、色々な人に一筆お願いして本を作ろうとしているのだが参加しないだろうか」というもので、同時に内容について非常に丁寧かつ真摯な企画書データも送ってくれた。
メッセージを一読、企画書を一読して僕が「やります」と返信したのは今LINEのやりとりを読み返すと九鬼君が僕にお誘いのメッセージを送信してくれた4分後。
即決即断である。
「面白そうだな」と思った事には特に考えもせずに合流する性分である。

そしてさらにやりとりを振り返って読んでみると、今回僕が書いた作品についてアイディアの雛形を九鬼君に「こんなのどうだろ」と提示しているのがお誘い頂いてから43分後。
本当に思い付きで『最高の三十代殺人事件』を『最高の三十代 〜Perfect SAN-JU-DAI』に寄稿した事になる。
まずは何より声をかけて頂いた運営チーム、そして主にやりとりを担ってくれ、更には僕の未熟な原稿の校正等引き受けて下さったこんぶトマト文庫こと九鬼君に感謝を表明したい。有難うございました。久しぶりの執筆(というとちょっと仰々しいか)活動、大変楽しんでやれました。

今回の参加メンバーは偶然にも僕が活動等々を続けてきた中で関わったりすれ違ったりした事がある方々、つまり全員存じ上げていらっしゃる方々で参加メンバー一覧を目にした際には「これはまた錚々たるメンバーに名前を連ねてしまったな」と思うと同時に、下手なものを書くとこれは恥ずかしい事になるぞ、と緊張感を感じたものだ。だけれども同時に「どうせ背伸びしたって自分の持ち分以上のものなんて出てこないんだし、まずは何より楽しんで描いてしまおう」と初っ端から爽やかな諦めも自分の中にある事も感じていた。
結局、産みの苦しみみたいなものは1秒も感じる事なく、憧れていたミステリー小説に「好きなんですよ」と軽薄なリスペクトを示しつつ自分の30代を振り返ったり、名優・田村正和氏が突如脳内に降臨して書いてるセリフにアテレコをして下さり「いやいやそれじゃああまりにもそのままだろう」と思いつつもその感じは抜けきらなかったり、アイディアを話して「面白いんじゃないでしょうか」とお墨付きを頂いた妻に中途中途で読んで貰って作品が自分本位になっていやしないか寸評して貰う計画は見事に頓挫したり、作品を書いていく上で30代にどんな時間を過ごしたのかこの日記自体が本当に自分の人生のアーカイヴとして大変意味のあるものになっている事を実感したり、最初から最後まで楽しく書く事が出来た。
あと久しぶりに自分の名前だけで作ったものが自分の作品として世の中に出、その評価とか一切を自分が引き受ける事になるのも良い経験であった。最近そういうの、なかったもんな。

出来上がった冊子は僕も一冊頂き、収録作品を読んだ。
特に赤井千晴さんの作品が赤井さんの人生そのものの厚み、熱み、圧み、集みが=作品の強度になっていらして、繊細な心情もきちんと語る誠実さや力強さ、そして筆圧や執念さえ感じさせる文章に大変惹きつけられた。
丁寧な人なんだろうなあ、と思う。いや赤井さんは他人ではないのでそういう方なのは知ってはいたけれども。

兎も角、大変面白い一冊になったなぁ、凄いなぁ、これは運営チームの発想の勝利だなと改めて思う。
是非ご一読を。