犬丸ラーメン2023

実に前回から3年の時を経て、犬丸ラーメンの公演を行った。
そもそもの経緯について備忘録として書いておく。まだ未実現の企画なので詳細を書く事は憚られるけれども「有るメディア関係の方が今池にかつて存在した大丸ラーメンについて取材をしているそうだから協力して貰えないだろうか」と今池HUCK FINN 黒崎店長より連絡を頂いたのが2023年の夏。「大丸ラーメンのためならば」と久しぶりに石黒メンバーに連絡を取り、我々犬丸ラーメンとして何か出来る事はないかとその方とやりとりをさせて頂いたのだが、タイミングや諸々の関係で今回は企画自体が見送られ、実現ならず。
しかし久しぶりに連絡を取った石黒メンバーと「今年やれそうだね」と話が進み、今池HUCK FINN 黒崎店長も「是非やろう」と有難いお言葉。HUCK FINNのご厚意なくして犬丸ラーメンなし。かくして犬丸ラーメン2023は実現の運びとなったのであった。
3年も間が空いたのは、メンバーそれぞれの生活等々との兼ね合い。特に「やらないぞ」でもないし「毎年絶対やるんだ」と決めていたわけでもないので本当に今年2023年は「やれたから、やった」のであった。去年だったら大丸ラーメン閉店から丁度10年だったのでキリも良かったのだろうけれども。


名古屋製麺さんから今回も仕入れさせて頂いた『大丸ラーメンの特注麺に限りなく近い麺』。
名古屋製麺さんは『211』と呼んでらっしゃったので多分それが品番。
公演が決定して翌日に電話したら

僕「あのー以前、大丸ラーメンさんに卸してらっしゃった麺と限りなく近い麺を100玉程買わせて頂いた事があるんですけれども」
『あー、はい!あれ、去年ってやられましたっけ?』
僕「去年はやってないです、確か前回は3年前だったかと」

もう憶えて頂けているのである。感謝感激。
個人的には大丸ラーメンをコピーする上でこの名古屋製麺さんの麺『211』は欠かせない要素だと思っている。
いや本家が麺が切れるとダイエーさんの焼きそば麺とかでラーメンを出してたりするので必須、ではないのだろうけれども、やはり麺が切れるまでは本家と同じように名古屋製麺さんの麺で提供したい。


カウンターも前回から引き続き登場。
このカウンターの有無はパフォーマンスに於いて物凄く重要である。本家と同じ色に塗装してあるのだが、石黒メンバー宅のベランダにて保管されているために雨風に晒されて良い感じに経年劣化している。いいねいいね、経ている感じ出ているね。
ちなみに今回一番我々を苦しめたのが物価高。以前でさえ中華そば(550円)に加えてブラックサンダーやトーマスのチューイングキャンディ(残念ながら2023年で生産終了のため今回は使用出来ず。ブラックサンダーで統一させて頂いた。並んでいるお客さんには懐かしのパインアメ)のオマケを渡して、一杯辺りの利益率は以前より下がっている。
本家が今も経営していたらどうなっていただろうか。大橋さんならこう仰るだろうな、と想像してパフォーマンスに盛り込んだりした。
同じく、新型コロナウイルスを経験した日本を大橋さんはどう言うかな、とも思ったのでパフォーマンス中に想像で盛り込んだりした。アウトプットしながら、時が捻じ曲がるような感覚があった。


見事に発掘された犬丸ラーメンの看板。
今後も使用して真っ黒にしていきたい。


開店前に今池HUCK FINN 黒崎店長や下平さん、サポートメンバーと一緒にファーストロットを食べるのが毎回の恒例。
「肉、いいね」とか「懐かしいねえ」とか言いながらズルッとやって、この後の長丁場に備えるのである。
肉もまだ前半のロットの頃は整っている状態である。どんどん煮込んでいく事で凄い事になっていく。それにしてもこの肉はやはり美味いなあ。全く調理に携わらないのでレシピは知らないけれども、やっぱりブーケガルニ(大橋さん「肉を煮る際はブーケガルニというハーブを使うです。カレーやシチューを作る時に肉を柔らかくするためのハーブですハイ」)との出会いが犬丸ラーメンの再現度を一歩推し進めてくれたと思う。

この日は合計88食提供。
麺は60食分用意していたので途中で買い出しを(お客さんに)頼んでイレギュラーな麺で提供を続けた。
終盤なんて練り物もなかったので肉と日本そばだけ、みたいな一杯も存在した。それでも誰も文句を言わずに嬉しそうにして頂けたので感謝しかないですハイ。

誰がいったか、『犬丸ラーメンは体験型のアトラクション。自分も役者となる舞台である』。
当初はそんな事さえ意識せずに始めた大丸ラーメンのコピーバンドであったが、今や僕にとっても非常に大きな意味のある活動となっている事は揺るぎようがない事実である。大橋さんのコピーをしながら、カウンターの向こう側に座るお客さんに中華そばを供するという事はラーメンや大橋さんという存在、カウンターという大道具を通じて『その人自身が大丸ラーメンでどう過ごしていたか(または過ごすのか)』を追体験させて貰う行為に他ならない。実は同時に観客として僕もそこに居るのであった。
この夜は88通りの『大丸ラーメンでの夜』を観させて頂いた。
この活動は大丸ラーメンを喪失した僕にとっては、セラピーの一種のようなものなのかもしれない。
有難うございました。またいつか。
次は3年も間隔を空けずに演れると良い。